| Aki Naganuma WashingtonDC同時代記 |
長沼亜紀 naganuma_washdc@yahoo.co.jp |
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| WashingtonDC同時代記 アメリカ政治・社会についての話題を隔週でまとめて紹介 |
| 戦場に行っているのは誰か(#4 2005/11/5) |
| イラクの戦場に行っている米兵の大半は、貧しい地方出身の白人で、黒人の割合は大きく下がっている-。11月4日付けのワシントンポスト紙とUSAトゥディ紙が、軍隊内の人種や出身地の統計から、そんな傾向を伝えている。新兵入隊率は、地元に職がなく経済的に低迷している中西部、南部の田舎に偏っており、一方、長年軍隊に占める割合が高かった黒人の比率は、この5年間で激減しているという。 国防省の統計を分析した民間研究機関(National Priorities Project)によると、新兵の約3分の2は世帯所得が全米平均より低い地域出身で、モンタナ、カンザス、ミシシッピ、テキサス州などの失業率、貧困率の高い郡ほど、多くの新兵を輩出している。例えば、全米で入隊率(18-24歳の人口千人に占める新兵の割合。)が21.6人(全米平均2.74人)と最も高いモンタナ州ミネラル郡の場合、世帯所得の中間値は29,100ドル(全米43,052ドル)で、貧困率は18.2%(全米平均12.1%)となっている。主に農業地帯のこれらの地方の住民の大半は、中産階級の底辺か、貧しい層に属する白人である。 典型として紹介されているのが、バージニア州南部のマーティンスビル・シティ郊外に住むアルバート・ディール(25歳)の例である。マーティンスビル・シティは緩やかな丘陵が広がる農業地帯。世帯所得の中間値が約27,000ドルと貧しく、地元には繊維・家具産業しかない。これらは経営不振で縮小・閉鎖が続いており、職はファーストフードの店員ぐらいだ。繊維会社、家具屋などを転々とした高卒のディールは、勤めていた建材会社から最近また解雇通知をもらい、はたと考えた。そして、彼が知る限り“最も安定した職業”につくべく、陸軍の採用窓口に電話をかけたという。 「できることは何でもやった」とディール。地元企業に履歴書を送ったがどこからも電話はなかった。離婚し3歳になる息子と、今の婚約者と彼女の6ヶ月になる娘がいる。「イラクには行きたくない。でも賭けてみるしかない」。陸軍士官学校のモーテン・エンダー教授(社会学)は「地域に行き場がない若者にとって、入隊は将来を開く一つの道」といい、実際、長引くイラク戦争で兵士のリクルートに苦戦している軍にとって、こうした地方の若者が貴重な供給源となっている。 一方、対照的なのが黒人である。国防省の統計によると、黒人の入隊率は2000年からこの5年間で40%も低下、この結果、各軍の兵士全体に黒人が占める割合も大きく減少した。例えば、陸軍の場合2000年の29.1%から2004年には24.6%に減少、海兵隊は2000年の16・2%から2004年には12.5%まで低下した。黒人のアメリカ全体の人口に占める割合は約13%で、人口比からみれば依然として黒人兵士の割合は高いものの、変化は著しい。 理由は、黒人の経済的・社会的地位が向上したこと、また、イラク戦争は特に黒人の間で不人気な点が挙げられている。32年前に徴兵制が廃止され、志願制に移行した当時は、黒人の多くは貧しく十分な教育も受けられず、雇用機会も限られており、軍人になることは職業訓練を受け、教育資金を得るための手段だった。しかし、黒人の大学進学率が1980年の7・9%から2002年には17.2%になる(1)など状況は変わり、以前ほど軍に入隊することへの魅力はなくなってきているという。 「アメリカを愛しているけれど、僕の人生だから、国に捧げるのはごめんだね」。高校を2年前に卒業し、ワシントンDC郊外の百貨店で働く黒人のライアン・ハリスは、トゥディのインタビューにこう答えている。低迷する地方の白人と豊かになった都市部の黒人。戦場に駆り出されるのはいつの時代も選択肢の限られた人々だが、それはアメリカ社会の変化を移す鏡でもある。 (1) Digest of Education Statistics. (参考記事)Tyson, Ann Scott, “Youths in rural U.S. are drawn to military,” Washington Post, November 4, 2005. Moniz, Dave, “Black Americans make up smaller share of military,” “Opportunities, opposition to Iraq war cut into recruiting,” USA Today, November 4, 2005. ©Aki Naganuma. All rights reserved. |