| Aki Naganuma WashingtonDC同時代記 |
長沼亜紀 naganuma_washdc@yahoo.co.jp |
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| WashingtonDC同世代記 アメリカ政治・社会についての話題を隔週でまとめて紹介 |
| 進化論VSインテリジェント・デザイン論(#6 11/18) |
| 進化論に異議を唱えるIntelligent Design(ID)論が最近話題である。「生命は複雑で、その創造は進化だけでは説明がつかない。そこにはIntelligent
Handの助けがある」というものである。科学者は「ID論は科学ではない」と反発、アメリカ人の多くも同論は姿を変えた『天地創造説』と見なしているが、推進者たちは「既存の理論に変わる最先端の科学」と主張して譲らない。ペンシルバニア州やカンザス州など一部では、学校の生物の授業に取り入れるところも出始めた。 ペンシルバニア州ドーバーは、労働者層が多い人口2万2000人の小さな田舎町だ。 8人の委員からなる町の教育委員会が昨年、高校の生物の授業でID論を取り入れたことで一躍全米の注目を集めることになった。同教育委員会の指針によると、進化論を教える際は 「進化論は事実ではなく、ID論という別の考え方がある。詳しく知りたい場合は『Of Pandas and People: the Central Questions of Biological Origins』(ID論推進団体が出版している本)を参照にするように」との解説を併せて読み上げることが義務付けられている。「子供たちに科学的に違う視点があることを紹介する」のが狙いだという。 高校の時に習ったダーウィンの進化論を思い出してみよう。鍵となるのが「自然選択」という考え方だ。最もその環境に適した特質を偶然獲得したものが繁栄し、長い年月これを繰り返して種は多様になっていくというもので、ガラパゴス島の鳥の観察からダーウィンが提唱、現在では生命科学の確立した基本定理として理解されている。 科学が科学であるためには検証が必要だ。つまり、定理から導かれる予測が実験などで証明できなければならない。ダーウィンの時代には、論を実験・証明することは難しかったが、最近では特にDNAの分析技術が進み、簡単に環境への適応と進化が実証できる。「理論という名前が付いているだけで科学的理論になる訳ではない。ID理論は科学的に検証できない」とAmerican Association for the Advancement of Science のアラン・レスナー氏は言い、(1)National Academy of SciencesもID論には科学的根拠がなく、学校の科学で教えることに反対している。(2)これに対し、ID論シンク・タンクDiscovery Instituteのジョン・ウエスト氏は「偶然と必要性だけでは、高度に複雑な生命体を説明しきれず、デザインを考えた知的存在があるとの説明の方が有効だ」と、進化論に変わる理論としてのIDを強調する。(3) ドーバーでは、教育委員会の方針に対して、「公教育に宗教を持ち込んでいる」として親などが、裁判を起こした。口頭弁論では、教員、科学者が動員されての大論争になり、連邦地裁が来年1月にも判断を示すことになっている。11月8日には、教育委員の改選があり、町の二分しての選挙戦の結果、ID論を導入した8人がすべて落選、ID論反対派が僅差で勝利した。 ヨーロッパの暗黒時代でもあるまいしと思われるかもしれないが、これは根深い文化論争である。天地創造論を信じているアメリカ人は多いし、特にキリスト原理主義者にとって人間の祖先がサルだという進化論は受け入れがたい。例えば古くは80年前、テネシー州に学校で進化論を教えることを禁じる法があり、教えた教員をめぐって裁判になる(ジョン・スクープ裁判)など、進化論VS天地創造論は、何度も繰り返されてきた論争である。一見科学のようなID論は、天地創造論派は新たなアプローチとも言え、アメリカ社会が保守傾向を強め、宗教保守派が教育委員会や地方議会で議席を増やしている中で伸張している。さらにID論は伝統的価値観を大切にする一般市民にもアピールする点がある。ドーバーで37年間、町民の髪を切り続けてきた床屋のバリー・マイヤーズさんはIDについて教えることは子供たちに「道徳的指針」をもたらすことになるのではと考え、ID導入派の教育委員を支持した。(4) カンザス州では11月8日、進化論を批判する新しい学習指導要領を承認された。背景には、2004年選挙で保守派が教育委員の多数派になった点があるが、似た動きは他の州でも広がりつつある。新指導要領に困惑したカンザス州知事は、「ハイテク産業を誘致して、カンザス州を発展させるには科学教育に力を入れなければならない。教育委員会はよく考えてほしい」とコメントした。(5)ごもっともである。 (1) Rick Weiss and David Brown, “New Analyses Bolster Central Tenets of Evolution Theory: Pa. Trial Will Ask Whether ‘Alternatives’ Can Pass as Science,” Washington Post, September 26, 2005. (2) Knight Ridder Newspapers, “Bush Backs Teaching of Intelligent Design,” Washington Post, August 2, 2005. (3) Weiss and Brown, September 26, 2005. (4) Laurie Goodstein, “A Decisive Election in a Town Roiled Over Intelligent Design,” New York Times, November 10, 2005. (5) Jodi Wilgoren, “Kansan Board Approves Challenges to Evolution: New Standards Also redefine Science,” New York Times, November 10, 2005. ©Aki Naganuma. All rights reserved. |