シカゴの楽しみ方


池原麻里子

 

この数年、仕事と遊びで、何度もシカゴを訪れた。毎年、秋から春にかけてのことだった。というのも遊びの場合は、Lyric Opera of Chicagoに行くことが主目的なので、秋と春の週末にオペラを2本ずつ観ることになるからだ。その場合、日中は美術館、博物館、ギャラリー巡りができる。この数年、関わっていたシカゴを舞台としたドキュメンタリー映画の仕事も、日系人の主人公が暗殺未遂にあったのが3月で、路上には雪があったことから、3月にロケしたり、秋から冬にかけての関係者にインタビューした。ということでシカゴの楽しみ方には多少、明るくなった。

今オペラ・シーズンも11月と3月にシカゴに行った。11月はDie Frau ohne Schatten(主演Deborah Voigt)、Giulio Cesare(主演David Daniels)、3月はEugene Onegin(主演Dmitri Hvorostovsky)、Il Barbieri di Siviglia

(Nathan GunnがFigaro)と私の大好きな歌手を観ることができた。特にオネーギンはこの役を歌うために生まれてきたような「ディミトリ君」(私のオペラ仲間との愛称)が、Metropolitan Operaで大評判だったRobert Carsenの演出で、見事に役になりきっていて大満足。キャストはメト並で、チケットは安め、航空券代やホテル代を考えると、DCに近いメトに行くより、割安だ。

さて日中はシカゴ美術館シカゴ近代美術館シカゴ大学東洋研究所シェッド水族館フィールド博物館、数々のギャラリーなどを楽しむことができる。

シカゴ美術館には数々の印象派の有名な作品のほか、安藤忠雄さんが設計した一室もある。現在、Renzo Pianoの設計による新館を建設中だ。

近代美術館にはいつも面白い展示がされていて、とても刺激になる。数年前は丁度、杉本博司さんが展覧会の準備中だったので、特別に案内してもらった。カフェの壁にはこの夏まで、村上隆のJellyfish Eyesが描かれている。

シカゴ大学東洋研究所は数年かけて改装され、観易い展示となった。同大学はペンシルバニア大学などと並び、古代中近東研究で有名だ。古代エジプト、ペルシャ、メソポタミア、アッシリア等の遺跡からの発掘物が展示されている。展示されているのは20世紀始めに発見されたものだ。今では考えられないが、巨大な遺跡の一部をそのまま持ち帰っている。知人のギブソン・シカゴ大教授はメソポタミアの専門家で、同僚たちとイラク戦争開戦前にブッシュ政権に遺跡やバグダッド博物館を保護するように警告していたが、聞き入れられず、ラムズフェルド前国防長官いわく”Stuff happens.”と片付けられてしまった。教授は自分が研究していた遺跡を始め、文明発生の地メソポタミアの遺跡群が荒されてしまったことをとても嘆いている。密輸されたものは日本にも流れているようだ。

シェッド水族館には世界中のあらゆる海洋生物が展示されている。ペンギンがとても可愛いし、イルカのショーも楽しい。アマゾンの一年間の生態系の変化の展示も大変、興味深い。

フィールド博物館は大陸別の展示となっており、アジア太平洋地域ではマオリ族のミーティング・ハウス、チベット文化などが紹介されているし、DCの自然博物館のように野生動物の剥製も沢山ある。数年前に私が訪問したときには、ポンペイ展を開催中だった。

ギャラリーはウェスト・ループやリバー・ノースのギャラリーが面白い。ウェスト・ループは旧倉庫街で、ちょっとチェルシーみたいだ。Douglas Dawson Galleryには、アイヌの切伏や刺繍をほどこした藍染の衣服やインドネシアの布等、世界中のエスニックなアンチークがある。Walsh Galleryはホットな中国や韓国のアーティストを扱っている。リバー・ノースではPerimeter GalleryがTakako Takaezuの陶芸品を、Max Saunders Galleryが世界中の有名なガラス工芸家の作品を扱っている。

シカゴはお芝居の街でもある。ゲイリー・シニーズやジョン・マルコヴィッチが設立したステッペンウルフ劇場やグッドマン劇場などで新作なども上演している。数年前にはシェークスピア劇場で、英グローブ座の全員男優による「十二夜」を観る事ができた。男性が女装していく姿を、「開幕前」にステージで見せるという粋な演出だった。

アル・カポネなどギャングでも有名な街だから、バスによるギャング・ツアーというのもあって、ギャングの縁の場所を案内してくれる。ジャズやブルースの店も多い。

それからシカゴ名物のディープ・ディッシュ・ピザだけでなく、おいしいレストランも沢山ある。極めつけはCharlie Trotter’sで、2007年も全米5位、全世界30位だった。かなり凝ったソースや素材が使われており、眼、鼻、舌を駆使して、堪能できる。それからオペラの後には、近所のカジュアルなAvecがお勧め。夜の11時半や12時でも混雑しているのだが、ここでおいしくなかった料理は一品もなく、いつも大満足だ。

 と、シカゴは色々、楽しめる街だ。建築でも有名で、私は未体験だが、Frank Lloyd Wright設計の家巡りもできる。

Lyric Opera of Chicago http://www.lyricopera.org/

シカゴ美術館: http://www.artic.edu/aic/index.php

シカゴ近代美術館: http://www.mcachicago.org/

シカゴ大学東洋研究所: http://oi.uchicago.edu/museum/

シェッド水族館: http://www.sheddaquarium.org/

フィールド博物館: http://www.fieldmuseum.org/

 

池原麻里子
東京都生まれ。成蹊大学英米文学科卒。ソニー本社国際通商業務室、法務部に勤務後、米ジョージタウン大学外交学部で国際関係修士号取得。公共政策専門チャンネルC-SPANの日本向け番組制作を経て、現在ワシントン在住のジャーナリストとして活動中。

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