ホッキョクグマとの遭遇もそうだし、神の芸術作品としか言いようがない様々な形をした氷山と、其の氷山を浮かべる怖いまで澄みきった静寂な海、そそり立つ壮大な氷河。北極の自然は、今までの想像を超えるものがあり、何か超人的な力、神聖なるものの存在までを感じさせた。その自然が急激な変化をして、氷やホッキョクグマが消えていくことになったら…。北極から戻ってから、北極を扱っているニュースや展示に、自然に注意するようになった。スミソニアン博物館やNational Geographic は、北極や南極の自然や氷に生息する動物の写真を使って、地球の温暖化の危機を警告している。
また11月の半ばには、ゴアと同時にノーベル平和賞を受賞した国連のIntergovernmental Panel on Climate Changeが、140カ国から2000名に及ぶ科学者達が6年かけた地球の温暖化に関する大々的な調査の最終レポートを発表した。これによると、地球の温度は前世紀に摂氏1.3度上がり、海面水位は15センチ上昇した。特に、過去30-40年の気温の上昇は人為的によりところが多大で、工場排気、石炭による発電、車の排気ガス等による温室効果ガスが主因である。今のペースでいくと、今世紀末には、地球の気温は10度も上昇し、世界の半分の動植物は絶滅し、益々激しい異常気象が起きるという。
其の反面、地球の温暖化に関する情報に接すれば接するほど、温暖化説に反するデータや議論も少なくないことが分かってきた。私の北極クルーズに乗船していたナチュラリストも、地球温暖化説は、どちらかというと誇張されているという見方だったが、人為的原因で温暖化が加速していること、および将来の温暖化の速度とその影響に関する予測は、不確実性があるのは否めないようである。
何れにしても、現在地球の温暖化に関する意識が地球的なひろがりをもって強まってきたのは良いことだが、科学的根拠がなかなかはっきりしないことについて、メディアに扇動されている面も確かにあるかもしれない。今回の北極旅行で訪れたイヌイットの小さな村、Ittoqqortoormiitには数日前、村人が撃ち殺したホッキョクグマの毛皮が、家の前につるしてあった。当村の人は、ホッキョクグマやMusk Ox等の毛皮を売って生計をたてており、ホッキョクグマは一人二頭まで殺せる特別許可を与えられている。今年に入って、この村だけで30頭近いホッキョクグマが捕獲されたとのこと。また、いくつかの家の庭には、あざらしの死骸がころがっていたが、これはソリを引く犬のえさになるそうだ。近い将来、これらのイヌイットの人々も、北極圏の動物が絶滅する予測が出てきているから、急に狩猟をやめろと、一方的に感情的な論理を押し付けられるようならないとは限らない。しかし、もし地球温暖化が人間の産業活動に因るものが大きいなら、主に先進地域に責任があることであるし、ホッキョクグマに関して言えば、その毛皮を買う大金持ちが存在するという需要側の問題もある。 |