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UNICEFGhana/Mitani/2007 


写真 3 UNICEF Ghana/Mitani/2007 

「 ガーナ:蚊帳でマラリア予防 」

 

三谷 純子

西アフリカのガーナには、キリンもライオンもサイもシマウマもいませんが、蚊とトカゲと蟻とは毎日を一緒に過ごすことになります。

その中でも蚊は、マラリアやデング熱の感染を媒介する困った昆虫です。

デング熱には予防薬はありませんが、マラリアには現在では毎日飲むタイプから一週間に一粒まで、いろいろな予防薬や治療薬がでています。でも出張ならともかく、数年間はそこに住んで働く場合、薬の長期間服用は体への影響が心配です。

一番の予防は蚊に刺されないことです。私はどんなに暑くても、村などで撮影をするような地方出張の際は色が薄い長袖長ズボンに靴下を定番にしていました。 けれども、事務所や自宅、パーティなどでこんな服装をいつもしているわけにもいきません。とにかく毎日毎日ものすごく暑いのです。

地球環境保護のためのCO2削減にはよくないと思いつつ、部屋の温度をかなり低めに設定し、天井の扇風機を回すと、蚊は涼しくて空気が動く環境が嫌いなので、かなり効果があります。こうしないと、街が停電になって真っ暗になると、ジェネレーターを回して電気がついている家や建物がとても少ないので、そのあたり一帯の蚊が集まってくるのです。窓の網戸はあちこち破れていて、何回言っても修理してくれないし、窓自体の取り付け方も悪いので隙間だらけです。道路の下水にはふたがないし、雨期にはあちこちに大きな水溜りができて、蚊は繁殖し放題です。

蚊よけスプレーや蚊よけクリームにはかぶれてしまい、長期間の使用は皮膚や健康への影響が心配です。ガーナでも、電気式の蚊取りマットや蚊取り線香、蚊に吹きかける殺虫剤をたくさん買い込んでみましたが、すごいにおいと煙で私はごほごほしているのに、蚊がブーンと飛び続ける音が途切れることはありませんでした。

それでも私が眠ることができたのは、蚊帳のおかげです。飲み忘れの心配もなく、副作用もなく、とても安価です。ユニセフは、ガーナをはじめマラリアが蔓延している国々の政府を支援して、殺虫剤で処理した蚊帳をマラリア予防のため、特に子どもや妊婦に配布しています。この薬品処理された蚊帳はきちんと使えば子どもの死亡の20パーセントを予防できるそうです。

ガーナでは毎年約2万人の子どもがマラリアで命を落としています。5歳未満の子どもの4人に一人は蚊が媒介する病気で亡くなっているのです。大人もマラリアにかかり、亡くならなくても、高熱にうなされる日々が数日はつづきます。看病や治療などにかかる費用や時間、働けない日数を考えると、マラリアは国全体にかなりの経済的な損失を与えていると考えられます。

ユニセフ・ガーナ事務所は2007年秋にマラリア予防の蚊帳のために日本政府から100万米ドルの支援をうけました。これで40万人の子どもと妊婦を蚊が媒介する病気からから守ることができるはずです。日本の援助は2004年から継続しており、他にUSAID、DFID(イギリス)などからも支援を受けています。(尚、2008年秋にはユニセフはガーナで170万米ドルのマラリア対策支援を発表しています。)

ガーナの子どもたちへのマラリアの影響に対するメディアの関心やガーナの人たちのマラリア対策への意識を高め、日本をはじめとする援助側にも現状を知らせるために、調印の記者会見を機に2分のニュースビデオを製作しました。(http://www.unicef.org/infobycountry/ghana_40840.htmlc

  写真 2 UNICEF Ghana/Mitani/2007 

撮影をしたのは、既に蚊帳を配布してあるアッパーイースト州のグモンゴ村です。土壁に囲まれた家の真ん中の庭が台所兼居間です。そこのかまどの前で、大きな土器のポットを背に、マラリアで二人の子どもを亡くしたアプレペイ・アンヨングビレさんの話を聞きました。「ある晩子どもが高熱を出しているのに気がついたから、急いで診療所へ連れて行ったんですが、誰もいなかったんです。それで、もっと歩いて別の診療所にたどり着いたけれど、そこも閉まっていて。仕方なく連れて帰る途中、子どもが引き付けを起こしてしまって。急いで近くの薬草師に見せようとしたんですが、着く前に死んでしまったんです。」と彼女は語ってくれました。もう一人の子どももほとんど同じような状況で亡くしています。この村から舗装道路までは、四輪駆動車でも何度もハンドルを取られそうになる粘土のようなぬかるみを越え、水が溜まった大きな穴を迂回して、道ともいえない道のような湿地帯を1時間以上かかります。歩いたら、少なくとも3時間はかかるでしょう。

アプレペイさんは他に4人の子どもがいます。子どもをたくさん産んでそのうち何人かはマラリアなどの病気で亡くすというのは、ごく普通のことと考えているようでした。彼女は、亡くした子どもについて淡々と語った後、「今は、子どもたちも自分も蚊帳の中で寝るようにしている。」といって部屋の中を見せてくれました。「マンゴーをたくさん食べたり、油の多いナッツをたくさん食べたりするとマラリアになるって昔から言われていたけど、蚊帳をつってからは、たくさん食べていてもマラリアにはならないわ。」といって笑いました。

この蚊帳を普及させるためにユニセフはガーナの保健省と協力して、村のボランティアも支援しています。ロバート・アゼゴさんもその一人で、支給された自転車に乗って妊婦や子どものいる家を訪問して蚊帳の使用を促進しています。

ユニセフのガーナ人スタッフのフェリシア・マハマさんによると、この地域の使用率は26〜29パーセントにとどまっています。夜も暑いので、戸外や屋上など広々としたところで寝ている人々にとって、窓がとても小さい屋内につった蚊帳のなかは、空気の流れも悪く、外より暑く、息が詰まる感じがして、慣れにくいのです。家の壁が土なので、釘を打つとせっかくの壁の一部が崩れてしまうので、蚊帳をつるのがいやだという人もいるそうです。白い蚊帳に包まれると葬式みたいでいやだという意見もあり、緑や青の蚊帳も作られています。蚊帳がマラリアを予防することには納得しても、新品の蚊帳はきれいだから、赤ちゃんが生まれるまでとっておいて、自分は使わない妊婦もいます。ガーナでは、まだまだ「時々マラリアで寝込むのはあたりまえのこと」と受けとめる人は多いのです。

このため、ユニセフでは、蚊帳の配布だけではなく、蚊帳の使用率を高めるため、人々の行動様式を変えるにはどうするか、そしてこれを根付かせるにはどうしたら良いのかを分析しています。年齢や性別、教育、地域の特色、情報伝達の経路等も考慮に入れ、戦略的な計画を立てて、より効果のある蚊帳の配布方法にも挑戦しています。

 

筆者略歴
三谷 純子
北海道大学文化人類学学士号。中国山東大学留学。カナダ、マクギール大学大学院コミュニケーション修士号。ユニセフ、UNTAC, 世界の子どもにワクチンを日本委員会、UNHCR,JICA等、主にユニセフ広報官として合計8カ国で勤務。ユニセフ・ガーナに2007年12月まで勤務。

写真の解説:
写真1:後に見える大きな土器のなべを、石の間でバランスを取って地面にたたせ、火を下で燃やして、とうもろこしの粉などを水でおかゆ状にしたものを作ります。アルミのおなべやホーローの洗面器も使っています。

写真2:一家がビデオ撮影のため蚊帳に入って騒いでいるところ。村には電気がきておらず、村に行くまでの道路には穴があったりと安全の問題もあるので、村を訪問できるのも、もちろん撮影も日中です。

写真3:ユニセフ支援の蚊帳をもらった妊婦さん。この撮影のときは土砂降りになってしまい、家の中は電気がないので暗すぎて撮影できず、家の入り口で撮影しました。

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