アメリカで育った愛国心 高田 雅子(Takada, Motoko) - WJWN(Washington Japanese Women's Network)

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ワシントンと私

アメリカで育った愛国心:VIEWS 2008年秋号(第15号)掲載

高田 雅子(Takada, Motoko)

Georgetown

私が初めてワシントンDCを訪れたのは、2001年9月20日、あの同時多発テロが起きた9日後のことでした。ダレス空港からDC市内へ向かうタクシーの車内から外を眺め、半旗を掲げたビルを見る度に、「あぁ、これがアメリカという国なのか」と感心させられたのをよく覚えています。この時はNIHへ短期入院する為にワシントンを訪れたのですが、その後、毎年NIHに検査入院することとなり、2004年には、とうとうワシントンへの留学を決意することなど、あのタクシーの中では全く想像すらしていませんでした。

2004年5月、私は、以前から希望していた米国大学院留学を実現させる為にワシントンへ移って来ました。最初の頃は、チェックの書き方が分からないと友人に相談したり、銀行のATMにお金を振り込む際、封筒に入れなくてはいけないことを知らず、現金をそのままATMに押し込み、ある日銀行から「もう止めて下さい」と連絡があったりと、失敗や戸惑いの連続。それでも少しずつ、自分が今住んでいるアメリカという国がどういう所なのか、この国に住んでいる人達は一体どういった考えを持っているのか、そして、私はこの国でどのように生きていくべきなのかを知り、学んで行きました。

その後、ジョージタウン大学の語学学校・大学院で学び、様々な国から来た学生達、特に韓国人、中国人を始めとするアジア諸国の人々と接する機会に恵まれました。彼らと話をしていると、「竹島問題をどう思うか」「日本が戦時中に私たちの国に対してしたことを、どう説明するのか」と直接的に聞いてくることに驚かされます。初めは、たとえ授業の一環だとしても「面倒な議論は避けたい」と無難なことしか言わなかった私も、「あなた達は、台湾を国だと思っているのか」と尋ねる中国人に対し、はっきりと自分の意見を述べる台湾人のクラスメイトに触発され、自分の意見を率直に伝えることの大切さ、難しさ、そして何より、自分の考えや思いを相手に知ってもらうことの喜びを知りました。また、このような交流を通して、韓国や中国が日本のことをどう見ているのか、そして「日本人として」私は彼らのことをどう思っているのか、意識的に、あるいは無意識の内に、自分が何を考え、どのような立場や行動を取っているのかを考える機会を持てたことは、素晴らしい経験です。

このような体験を通して気付いたことがあります。それは、私が自分で思っていた以上に、日本という国を、その文化を、言語を、そして人々を愛しているということです。こちらに来たばかりの頃は、「日本よりアメリカで勉強した方が良いに決まっている」「『日本人は集団主義的だ』と言われたくないから、なるべく日本人とは関わらないようにしよう」「英語を勉強しなくてはいけないから、日本語は極力話さないようにしよう」と意気込んでいました。けれども、いざクラスルームの中で、色々なバックグラウンドを持つ人々に注目されながら、「日本とはどういう国なのか」を話した時、私の口から出てくるほとんどが、どれだけ私達の国や文化が素晴らしいものなのか(もちろん、良くない面もありますが)を皆に伝えようとする言葉ばかりでした。もし私がずっと日本に住み続けていたら、気付かなかった、考えもしなかったことかもしれません。日本を離れ、アメリカという国で生活し、多種多様な文化に触れる機会があったからこそ、自分が生まれ育った国の素晴らしさ、尊さを実感することが出来るようになりました。

ふと、日本のことを思います。日本にいる家族や友人達のことを思います。バーナード・ショーは、“Patriotism is your conviction that this country is superior to all other countries because you were born in it.”「愛国心とは、自分が生まれたという理由で、その国が他より勝っているという信念のことである」と、少し皮肉っぽく言いました。けれども私は、「愛すべき国がある。自分の帰る場所がある」と思えることを、今は心から幸せに思えます。

著者紹介

高田 雅子(Takada, Motoko)

兵庫県生まれ。甲南女子大学卒業。ジョージタウン大学言語学部修士課程在学中。現在、Samuels International Associates Inc.にインターンとして勤務している。



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