2度目のワシントン生活 和田 絵里子(Wada, Erika ) - WJWN(Washington Japanese Women's Network)

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ワシントンと私

2度目のワシントン生活:VIEWS 2007年冬号(第08号)掲載

和田 絵里子(Wada, Erika )

ワシントンは私にとって東京についで親しみのある街である。1998年、大学院4年目、博士論文半ばで、シンクタンク(国際経済研究所、IIE)でリサーチアシスタントとしてはたらきはじめ、その後結婚、出産を経験し、2002年まで暮らした。そして、2006年6月に今度は4人家族で戻ってきた。

1998年にワシントンで暮らし始めたとき、すでにアメリカ生活も長く、英語も生活には不自由しないぐらいになっていたので、感覚的には日本人というより、“ミシガンの田舎者、大都会ワシントンに来る”という感じだった。そんなワシントンでの初出勤の日、ワシントンはまれに見る大雪に見舞われ、交通機関は大混乱。そんなこととは知らない私はミシガンで愛用していたスノーブーツを履き、手袋、帽子、ロングコートのいでたちでオフィスまで15分ほどの道を歩いて出勤。だが、オフィスはがらがら状態だった。幸い私のボスは出勤していたが、私が徒歩でオフィスまで来たと聞き、驚愕していた。(すぐに私がミシガンから来たことを思い出し、納得の様子だったが。)

私のワシントン生活はこのIIEぬきに語ることはできない。本当によい仲間、上司に恵まれた。上司たちは皆仕事ができるだけでなく人格者で、私たちのようなアシスタントを導いてくれる。仕事に対する評価は厳しいが、前向きで公平なものだった。しかもキャリア形成についてもいろいろと気を配ってくれた。これはきっとアメリカ社会全般に言えることだと思うが、いわゆる仕事のできる人は人間的にもできた人が多いのではないか。一人で仕事はできないし、有能な部下を持つことが自分の成功につながるし、仕事の流動性が高いので、有能な人は自分のことを高く評価し、将来のキャリアに有利な上司の下で働こうとする傾向が高い。どれほど仕事ができても部下をきちんとケアーできない上司の下には有能な部下が集まりにくく、結果、人を統率するような立場に上れないのではないか、というのが私見である。もちろん、最初から人格者の人もいれば、仕事上必要に迫られて変わってゆく人もいると思うが、私のワシントンでの仕事の経験から得た感想だ。

このように恵まれた環境で仕事をし、アダムズ・モーガンのアパートに住み、ジムに通い、パーティーをし、いろいろな人と出会い、気楽な独身生活を送っていたのだが、2000年に結婚し、子供が生まれると、急遽、子育てに追われる“駐在員の妻”となった。しばらくは育児休暇だったが、IIEでの未完のプロジェクトを、子育てしながら完成させ、その成果発表の会議に子連れで出席したのがいい思い出だ。哺乳瓶、おもちゃ持参で会議に望んだが、会議の間中子供は私の足の上で寝ており、さて終わりといったときに私が子供を抱いて立ち上がったら、みんな知らなかったらしく、いっせいに驚きの声を上げた。

2002年に日本に帰国したが、主人の転勤により2006年6月から再びワシントンでの生活が始まった。今度は二人の子供(5歳と3歳)を抱えて、はじめから駐在員の妻モードで、毎日学校と家の往復に明け暮れている。ただ、仕事は続けたかったので、前の上司にコンタクトし、同じシンクタンクで、在宅、パートタイムで働くこととなった。日本で働く母をしていたときと比べかなり時間に余裕のある生活だが、食事作りに手を抜けないし、(コンビニもデパ地下もないし)しかも子供のお弁当まで加わり、家事に費やす時間は飛躍的に増えた。日本ではできなかった、学校でのボランティアも積極的にしているので、週に1-2回は学校に行っているような気がする。ほとんどのお母さん方は何かしら仕事をしている人が多いようだが、子供が小さいうちはパートタイム、という人も多いようだ。あるいはもう仕事も思う存分したし、自分の好きなこともしたし、お金も十分稼いだので、これからはリタイヤ生活を子供とともになんていう優雅な人もいるようだ。

私はたまたま主人の転勤に伴い、日本での仕事をやめ、子供中心の生活をしている。今はきっとそういう時期なのだと思う。以前のワシントン生活が自分中心の生活だったように。このように生活の中心を自分で選択できるというのは、じつはすごいことではないかと思う。日本ではつい仕事中心になってしまうから、特に男性の場合。最近はようやく保育園などでもだいぶお父さんの姿が見られるようになったが、こちらの学校では平日の行事でも半数以上のお父さんが参加している。それに土曜日のスーパーに行くと子連れで買い物をしているお父さんの姿をよく見かける。うちの主人にもこちらにいるうちにこの習慣が根付いてくれればいいのだが…

そんなワシントン生活、始まってまだ半年、これからどんな素敵な暮らしができるか、わくわくどきどきの毎日だ。

著者紹介

和田 絵里子(Wada, Erika )

2006年6月より2度目のワシントン在住。現在Peterson Institute for International Economics(元IIE)のリサーチフェロー。



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