あれこれ 飯島 奈絵(Iijima, Nae) - WJWN(Washington Japanese Women's Network)

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ワシントンと私

あれこれ:VIEWS 2005年夏号(第02号)掲載

飯島 奈絵(Iijima, Nae)

2001年10月から1年、DCに暮らした。私は日本の弁護士である。15歳から3年半をニュージャージーで過ごし、英語力も一応、セールスポイントであったが、横文字にも対応できる弁護士として勝負するには語学だけでは不足であり、英米法の知識も必要不可欠と感じた。そこで、ロースクールへ留学し、ロースクール卒業後の1年、DCの法律事務所に研修を兼ねて勤務した。

今回、DCで暮らし、まず驚いたのは首都でありながら街中を(ホワイトハウスの前を)リスが走り回ること。私はいまだかつて日本でリスを見たことがない。(ついでに蝙蝠も、売っていないカブト虫もクワガタ虫も見たことがない。)

次に、感じたのはアメリカ人、そして、ここに住む日本人の方々の参政意識の高さ。日本では、多くの国民が「政治は政治家が密室で利権がらみであれこれ決める何だかよくわからないおどろおどろしいもの。」といった意識を持ち、政治に関わろうとしない。露悪的にいえば、政治に関心があるのは権力意識がよほど強いか、妙に純粋で理想論ばかりを述べる「青い」人か、宗教関係で動員がかけられた人といった意識がある。なぜこのように違うのか。単なる「国民性」ではすまないであろう。日本人も米国の政治は面白いと思っているのだから。違いは大統領選か?二大政党制か?

勤務先法律事務所で『民主主義』を感じたことがあった。クライアントの日本企業が州法に抵触した。勤務先事務所は「州法の制定手続、規制方法に手続的瑕疵がある。当該法の規制範囲は広範に過ぎる点でも問題がある。争おう。」という。しかし、日本企業は煮え切らない。日本では訴訟を提起したということ自体、新聞沙汰になる。人聞きが悪い。企業イメージが下がる。その上、監督官庁にたてついたら、どのような不利益があるか。国にたてつくとの構図も企業イメージを下げる。日本企業のそんな思考方法を説明したところ、米国人弁護士に呆れられた。「法律に瑕疵があれば、その是正を求めることは、民主主義における市民の権利であり義務でないか。」と言われた。やはり日本はムラ社会なのか、出る杭は打たれるのか。国は「お上」なのか。

滞在時期が9/11、イラク戦争の頃だったので、戦時となると街中、星条旗一色となり、マスメディアまで一致団結し、反戦運動が予想外に聞こえてこないことにも驚いた。炭疽菌騒動や無差別ライフル連続狙撃事件もあった。事件の渦中に住み、私は相当緊張した。ある日、勤務先(ホワイトハウスの隣)で避難訓練があった。午後2時にサイレンが鳴ったら、エレベーターを使わず階段で速やかに避難となっていた。2時にサイレンが鳴った。弁護士各自に割り当てられた個室から出て階段を下りる…が明らかに人が少ない。担当秘書の姿もない。ビルの下で担当秘書を見つけ聞いたところ、「12階から階段で降りるなんて冗談じゃない。今日はゆっくりランチを食べた後、戻らないで、避難訓練までここで待っていた。ほとんどの人がそうしている。」と言われた。担当秘書はいつも真面目でとてもきちんと仕事をする人である。この危機意識の欠如、勤務先から言われても自分で不要と考えたらやらないという姿勢。横並びの日本との違いを思った。

DCと言われ、思い出すことを脈絡なくあげた。日本へ戻ってから3年近くが経つ。会社更生やら民事再生やら企業の倒産処理が多く、目先の問題解決に追われている。従業員、取引先、顧客等、多数へ直接影響することが多く気が引き締まるが、そればかり、近視的ではいけないと、世界について考えていたDCの方々を思いながら自戒する。

著者紹介

飯島 奈絵(Iijima, Nae)

弁護士。



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