ワシントン:第二の印象 竹林 愛(Takebayashi, Ai) - WJWN(Washington Japanese Women's Network)

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ワシントンと私

ワシントン:第二の印象:VIEWS 2011年夏号(第26号)掲載

竹林 愛(Takebayashi, Ai)

わたしとワシントンの出会いはあまりメモラブルなものではありませんでした。学生時代、ミネソタで交換留学生として勉強していたわたしは、はじめてのアメリカ生活ということもあって余裕がなく、たまの旅行と言えば、車を持っている友人に夜通しドライブしてもらってシカゴに遊びに行くくらい。1年近くアメリカに滞在していたのに、ほぼ中西部のことしか知らなかったと言ってよいでしょう。

そんなわたしが1学年を終え、日本に帰る前に選んだのが東部・南部旅行。車を持っていなかったので、アムトラック、グレイハウンドを乗り継いでの旅行です。ニューヨークからニューオーリンズに南下する途中のワシントンに、同じ交換留学プログラムで渡米していた友人がアパートを借りていたため、少しだけ居候することになりました。

ワシントンに降り立っての第一印象はずばり、「地味」! 当時、日本の父母宛てによく葉書を書いていたのですが(今も週一で書いています。レトロでしょう)、「今、ワシントンにいます。リーマン(サラリーマン)ばかりでつまらない街です。これから、FBIの見学に行ってきます。」と、いかにも若者の無知全開かつ直截的な感想がしたためられており笑ってしまいました。そう、その頃は数あるスミソニアンには見向きもせず、「ここ、やることないねえ」と言いながら、同じくワシントンの友人のところに集まってきた他の友人らと一緒に毎日モールに出かけては車座になり、トランプを延々やっていたことが懐かしく思い出されます。その後も、みんなでカレーを作ったり、お互いの髪の毛を切ったり、「ワシントン」という都市そのものとはまったく関係のない思い出ばかりをたくさん作って帰国したのでした。

「海外の仕事がしたい」と希望して今の会社に入社後は、インドネシア、マレーシア、シンガポール、ベトナム、中国、英国、スイス…と、なぜか「アメリカ以外」の海外案件に携わることに。アメリカの「ア」の字も出てこない10数年を過ごしました。 もうアメリカとは縁がないのかな…と思っていた矢先に舞い込んで来たのが今回の赴任の話でした。

学生時代の薄い印象のため、あまり期待していなかったワシントン生活ですが(失礼!)、今ではすっかりその魅力にはまっています。一番の魅力は、様々なバックグラウンドを持つ人々と簡単に広く知り合いになれること。これは、以前ニューヨークに駐在していた方から伺ったのですが、ニューヨークは日本人の数が非常に多いため、駐在員同士だけでコミュニティが形成されてしまい、他社の方々と交流する機会がワシントンに比べてぐっと少ないそうです。なるほど、ワシントンの大きすぎず小さすぎず…という規模が交流をしやすくしているのかもしれません。また、世界銀行の文化祭イベントで日本文化の紹介として「マツケンサンバ」を踊ったり、現地の短編映画やアジア映画のボランティアでチケットもぎりやウエイトレスを体験したり、ワシントン恒例の「新春祭り」で巫女さんの役をやったり。母校・早稲田大学のOB・OG会「ワシントン首都圏稲門会」の幹事にもなりました(随時新規会員を募集しておりますのでお声をお掛けください!)。こうした活動を通して、ユーモアにあふれる優しい友人もたくさんできました。

美術、クラシックファンのわたしには、ナショナル・ギャラリー・オブ・アートの次々に入れ替わる展示やケネディ・センターでのコンサートは週末の活動に欠かせません。オペラ鑑賞時には、学生時代にケネディ・センターの入口で10ドルで買ったオペラグラスを今でも持参しています。ダウンタウンに点在する小劇場で観る政治のパロディ劇や即興映画・ミュージカルもおもしろい。

ワシントンは日本より寒いですが、氷点下30度近くまで落ちるミネソタの冬を経験していますので、大丈夫。落ち着いた雰囲気と広い空も気に入っていて、ニューヨークに出かけても、ワシントンの落ち着きが懐かしくなり、1日目から「早くワシントンに戻りたい」とそわそわし始める始末。そう、わたしはすっかりワシントンの大ファンになってしまったのです。これは学生時代のわたしの目が節穴だったのでしょうか、それとも年とともに嗜好が変化したのでしょうか。

行きたいところがあまりにも多いので、ワシントン地域の「行きたいところリスト」を作ってはときどき進捗度合いをチェックしているのですが、リストは消化されるどころか長くなる一方です。駐在中に行きたいところをすべて制覇できることはないような予感がしますので、このリストを完全消化しに、そしてなにより、大好きな友人たちに会いに、将来、きっとワシントンに戻ってくると確信しています。

著者紹介

竹林 愛(Takebayashi, Ai)

千葉県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。(株)NTTデータ入社後、開発途上国支援案件、東南アジア向け製品のマーケティング、営業等に従事。2010年より同社のワシントンDC拠点に出向中。



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