My Beloved Neighbors(私の愛する隣人達) 梶原  綾(Kajiwara, Aya) - WJWN(Washington Japanese Women's Network)

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ワシントンと私

My Beloved Neighbors(私の愛する隣人達):VIEWS 2012年冬号(第28号)掲載

梶原  綾(Kajiwara, Aya)

遠いアメリカへ向けて

ワシントンに到着、ダレス空港にて
ワシントンに到着、ダレス空港にて

瀬戸内海の小さな島出身の私にとって、アメリカは遠い遠い存在だった。私たちがそのアメリカ・ワシントンD.C.に行くことになったと知った田舎の両親は、「生きて会えるのは、これが最後になるかもしれない」と本気で涙ぐんだほどだ。まさか自分がこの地に住むことになろうとは・・・。

それから1年半。不安だらけで渡米してきた私は今、ワシントン郊外メリーランド州ベセスダのカデラック(Carderock)で、素敵な隣人(Neighbor)達に恵まれ、主人と息子と楽しい毎日を過ごしている。

カデラックの隣人たち
新居オーナーの愉快なフィルと仲間たち

ここに住むことに決めたのは、一足先にワシントン入りしていた主人だった。この家には、奥さんを亡くしたオーナーのフィルが一人で住んでいた。明るくて豪快に笑うフィル、主人はこのオーナーの人柄に惚れてここに住むことを決めたらしい。フィルに勧められるまま、地域のコミュニティーネットに私たち家族の紹介・挨拶文を載せたところ、翌日には知らない人たちから続々とメールが届いた。「ようこそ、カデラックへ!」「うちにも同じ年の子どもがいるのよ。」「わからない事があったら、何でも聞いて。」高校以来英語に触れていなかった私は、この日から暫く辞書片手に深夜まで、新しいご近所さん達に返事を書き続けることになった。

また昼間には、知り合いがいるはずのない我が家のドアベルが頻繁に鳴った。シャンパンや手作りのお菓子を持って歓迎の挨拶に来てくれるのだ。ご近所中の人が私の姿を見かけると近づいてきて挨拶してくれた。さすがアメリカ!なんてフレンドリーなのだろう!そして、ここでは日本でよく使う「社交辞令」というものは通用しないようだ。すべてのお誘いに「ええ、ぜひ今度。」と適当な返事をしていると、具体的な日時が決まって実行される。私の「社交辞令」のせい(お蔭?)で、それ以来2ヶ月間、毎週末、どこかのお宅のディナーに招待されることになった。

うちから2、3軒離れたガールフレンドの家に転がり込んだオーナーのフィルが、まもなく私たちの歓迎パーティーを開いてくれた。なんとご近所中に案内状を出したという。日本では個人宅にそんなに多くの人を招くというのは考えられないことだが、当たり前のように50人近くのご近所さんたちが集まってきた。「Nice to meet you!」選挙中の候補者のように多くの人と握手をした。その後もフィルは何かと私たち家族のことを気にかけてくれる。私にとってはもはや頼れるアメリカのお父さん、息子にとってもおじいちゃんのような存在だ。

お隣のスーザンおばあちゃまのお誘い

ワシントンDCの春
ワシントンDCの春

お隣のスーザンもご紹介しておかなければならない。60歳代後半のスーザンはご主人と息子さんの3人暮らし。あまり人付き合いは多くなさそうだが、私達を色々と誘ってくれる。この家に越して来てまもなく、一緒にミーティングに行かないか、と誘われた。どんな集まりなのかはっきり分からなかったが、断わりきれずついて行った。途中車内でスーザンは、「今日は私の母が来るの。私が5年生の時の先生もいらっしゃるのよ」と言った。え?スーザンのお母様、小学生の時の先生って、一体おいくつなんだろう?連れて行かれた場所は教会。不安、いえ予想通り、そこでのミーティングには80、90歳代のおばあさま方が沢山いらっしゃった。その内のお一人が私に微笑みながら話しかけてくれた。「私は日本の長崎にいたことがあるのよ。戦前だけどね」。穏やかな会だったが、なかなか共通の話題を見つけるのが大変だった。

ある寒い日、いい場所があるからといって、スーザンが私と息子を公園に連れて行ってくれたこともあった。着いてみるとそこには幼児用遊具がいくつか・・・。スーザン、息子はもう6年生なんですけど・・・。時々ピントがずれていることもあるが、あれこれ世話を焼いてくれる私の大切なお隣さんだ。

ダイナミックなダイアナ

そのスーザンのお隣に、私と同年代のダイアナがいる。彼女は弁護士で忙しい身なのに、一人でいると引きこもってしまいがちな私をよく誘ってくれる。一緒に絵画を描いたり、買い物に出かけたり、巻き寿司を作ったり。でも彼女のお誘いはいつも突然だ。「今からゴルフの練習に行かない?」「Now?」、「今夜、コンサートに行かない?」「Tonight?」。ダイアナ、もう少し前もって言ってくれると助かるんだけど。

ありがとう、私の愛する隣人たち

2011年3月11日、東日本で未曾有の大震災が起こった。あまりの惨状に愕然とし、被災された方々のことを思うと胸が痛んだ。そんな時もフィルはすぐに駆けつけて「日本の家族は大丈夫か?友達は?」と心配してくれた。他のご近所さん達もみんなが心配して声を掛けてくれ、励ましのメールや電話も頂いた。みんなの気持ちがとても嬉しく、そしてこんな温かいご近所さんに恵まれたことを有難いと思った。

日本を発つ時、友人達に涙、涙で別れを告げてきた私だが、日本に戻る時、今度はこの愛するNeighbor達に別れを告げなければならない。一体どんな言葉で感謝を伝えられるだろう。でもきっと「See you soon!いつでも帰っておいで。」と、優しくハグして送り出してくれるに違いない。

著者紹介

梶原  綾(Kajiwara, Aya)

愛媛県出身。西日本放送で報道記者・キャスターを勤めた後、夫の転勤で東京、ワシントンに移り住む。Bethesda在住。 



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