ワシントンDC、そのソフトな魅力とハードな魅力 切石 博子(Kiriishi, Hiroko) - WJWN(Washington Japanese Women's Network)

VIEWS

ワシントンと私

ワシントンDC、そのソフトな魅力とハードな魅力:VIEWS 2014年夏号(第38号)掲載

切石 博子(Kiriishi, Hiroko)

米国国立公文書館本館
米国国立公文書館本館

観光名所盛りだくさん

ワシントン名物と言えば、まずはポトマック河畔の桜にスミソニアンの博物館や美術館でしょう。ゆったりとした緑の中の観光都市ともいえる程の名所が盛りだくさんでとても魅力的な街ですね。一方、ワシントンは国際政治の中心、米国政府、米議会、各省、それに各国大使館がそのオフィスを構えるフォーマルな都市というイメージも強くあります。そこから想像されるのは「お固い街ワシントン」との印象も大きいようです。最近は様々な情報が簡単に得られる時代ですから事情が異なるかも知れませんが、もう十数年前、知り合いの日本人ビジネスマンがワシントン出張を会社から命じられた時、「ニューヨークだったら仕事の合間に楽しめるのに、ワシントンじゃーねー」なんて不服そうでした。所が実際にワシントンに出張で来て、フリーな時間にナショナルモールを歩き、いくつかミュージアムを見学している内に、「なんと立派なコレクションだろう」と感嘆。おまけにどこも「無料」で見学、観光できると、次回は家族でゆっくり観光に来ると決めたと興奮めいた声で話していました。「知れば知る程魅力的」とすっかりお気に入りになったとのことです。

公文書館でリサーチ体験はいかが?

そこで今日はもう一歩踏み込んで、普段観光では行かない「お固い」と思われがちな側のワシントン、しかしよく知ると結構楽しめる施設について少しご案内致します。ワシントンの中心、ペンシルバニア通りと7番アヴェニューの角に米国立公文書館本館(National Archives and Records Administration) があります。 公文書館と聞いただけで「退屈」と思われてしまいがちなせいか、実際に足を運ばれた方は少ないのではないでしょうか。1934年に設立された比較的新しい政府機関で、米国のあらゆる公文書が保管保存されている施設です。毎日作成され、増え続ける政府関連の文書だけでも並みの量ではなく、新しいものだけでなく、古い情報もきちんと保管され、基本的には30年を経過した記録については一般に公開されることになっています。米国人のみならず世界中の誰もがここに保管されている記録を閲覧することができます。米国の「記録すること」、そしてそうした記録を保存していくということに対する情熱は「あっぱれ」と賞賛すべきものでしょう。 さて、最近は名所を訪れるだけでなく、そこで機会があれば体験してみる観光も流行っているとのこと、アーカイブスでリサーチ体験等も楽しいかも知れません。比較的簡単に検索できる映像リサーチをお進めします。日本人なら日米関係の記録に興味を持たれるでしょう。まずは7番アヴェニュー側から一時間おきに出ているアーカイブス無料シャトルで、第二次大戦以後の日米関係記録が多く保管されているメリーランド州カレッジパーク市にある分館へ向い、ここで手続きを済ませ、4階にある映像リサーチ室で行えます。スタッフの親切なアドバイスもありますので、心配ご無用です。勿論ここも無料で利用できます。

米国公文書館カレッジパーク分館、リサーチャー用閲覧室
米国公文書館カレッジパーク分館、リサーチャー用閲覧室

公文書捜しのプロのリサーチャー

公文書館に保管されているのは文書や映像や写真、地図など、大量の資料です。すべてオリジナルが基本です。そして、こうした資料をそれぞれの分野の研究者や学生、マスコミ関係、小説家やドキュメンタリー作家、弁護士、様々な分野の専門家がそれぞれ必要な資料を捜し、その中の情報を仕事や研究のために利用しています。資料捜しも慣れるまでに時間がかかります。特に文書の場合ですが、資料の山からほんの一部の小さな情報を見つける訳ですから、自分が求める情報(オリジナル文書)に辿り着くのはそう簡単ではありません。それは公文書館に保管されている文書の量が極端に多いのと、そうした資料の分類がシステマティックに行われているものの、結構複雑だからです。そんな理由から、公文書館で文書を見つけるプロのリサーチャーという職業が存在しています。仕事や研究などでここを利用する人たちにとって、公文書館は宝の山です。依頼者の求める文書をより速くより正確なものを見つけるプロのリサーチャーは言わば、昔話の「花咲かじいさん」の愛犬、ポチのようです。宝の山をあちこち嗅ぎまわり、何か「臭うぞ」とばかりに「ここ掘れワンワン」です。テレビのドキュメンタリー番組内容に関連する歴史的資料(文書や映像や写真等)を見つけたり、作家の執筆に必要な資料を捜したりが依頼される仕事の大半でしょう。筆者自身もここ20数年プロのリサーチャーとして大量の日米関係や核関係他の資料を捜し、見つけ、これを読んで、大体の内容を依頼者に伝えるという仕事を行ってきました。ここ10年程の間に一部はオンラインでも検索できる様になり、世界中どこにいてもある程度はインデックスで求める資料を検索できる様になっています。筆者が最初にプロとしてリサーチを始めた頃は、資料探しのためのインデックスというようなものは殆ど無で、多くの場合は、各分野の資料のエキスパート(アーカイビスト)と一緒に資料倉庫に入り、そこで、求める資料が入っていそうなボックスをいくつか見つけ出し、その中身を閲覧室で検索するという具合でした。当りもあればはずれもある。まず最初に見つかった関連資料の中からヒントを得て、核心の情報に辿り着くなどなかなか面白く、エキサイティングな仕事です。時には「日本の○○議員は英語が上手だと言われているらしいが、聞いてみて何を話しているのかよくわからなかった」などという私的なメモが文書に添付されていたりでこっそり微笑んだりです。

あの有名な小説やドラマもここから

ここで米国人による検索数が一番多いのが、自分の家系を調べる「ファミリー ツリー」の検索です。昔、米国テレビ映画で、「ルーツ」というドラマが放送され、大きな反響を呼びました。このオリジナルの小説を書いた作家、アレックス・ヘイリーもこれを書く為に公文書館に足を運び、資料を検索し、それをもとに物語を書いたといいます。又、社会の悪を追求する小説で多くのベストセラーを生んだ日本の山崎豊子も公文書館の資料から一部の作品を書いたそうです。この様に公文書館は様々な公文書の中に多くの貴重な物語の原点が埋まったまさに宝の山を持つ施設です。是非一度足を運んでみられ、過去にタイムスリップされてはいかがでしょう。

著者紹介

切石 博子(Kiriishi, Hiroko)

ジョージワシントン大学心理学部卒業
米情報会社で日米関係、自動車関連のリサーチ
フリーランス・リサーチャーとしてテレビドキュメンタリー番組や新聞記事、ミュージアムなどの依頼で主に米国立公文書館他、全米各地の資料館等でリサーチを行っている。
情報専門誌等に執筆。



お知らせ

2019/02/01
VIEWS 2019年冬号を公開しました。
2019/11/01
VIEWS 2018年秋号を公開しました。
2018/08/01
VIEWS 2018年夏号を公開しました。
2018/05/01
VIEWS 2018年春号を公開しました。
2018/02/01
VIEWS 2018年冬号を公開しました。
2017/11/01
VIEWS 2017年秋号を公開しました。
2017/08/01
VIEWS 2017年夏号を公開しました。
2017/05/01
VIEWS 2017年春号を公開しました。
2017/02/01
VIEWS 2017年冬号を公開しました。
2016/11/06
VIEWS 2016年秋号を公開しました。
2016/08/06
VIEWS 2016年夏号を公開しました。
2016/05/01
VIEWS 2016年春号を公開しました。
2016/01/30
VIEWS 2016年冬号を公開しました。
2015/11/01
VIEWS 2015年秋号を公開しました。
2015/07/26
VIEWS 2015年夏号を公開しました。
2015/04/26
VIEWS 2015年春号を公開しました。
2015/01/04
VIEWS 2015年冬号を公開しました。
2014/10/09
VIEWS 2014年秋号を公開しました。
2014/07/18
VIEWS 2014年夏号を公開しました。
2014/4/21
VIEWS 2014年春号を公開しました。
2014/1/23
VIEWS 2014年冬号を公開しました。
2013/10/08
VIEWS 2013年秋号を公開しました。
2013/07/08
VIEWS 2013年夏号を公開しました。
2013/04/08
VIEWS 2013年春号を公開しました。
2013/01/09
VIEWS 2013年冬号を公開しました。
2012/10/15
VIEWS 2012年秋号を公開しました。
2012/07/09
VIEWS 2012年夏号を公開しました。
2012/04/09
VIEWS 2012年春号を公開しました。
2012/01/17
VIEWS 2012年冬号を公開しました。
2011/10/12
VIEWS 2011年秋号を公開しました。
2011/10/12
VIEWSバックナンバーを追加しました。
2011/07/12
VIEWS 2011年夏号を公開しました。
2011/04/06
VIEWS 2011年春号を公開しました。
2011/01/11
VIEWS 2011年冬号を公開しました。
2011/01/11
VIEWSバックナンバーを追加しました。

更新履歴

2019/02/01
VIEWS 2019年冬号を公開しました。
2018/11/01
VIEWS 2018年秋号を公開しました。
2018/08/01
VIEWS 2018年夏号を公開しました。
2018/05/01
VIEWS 2018年春号を公開しました。
2018/02/01
VIEWS 2018年冬号を公開しました。
2017/11/01
VIEWS 2017年秋号を公開しました。
2017/08/01
VIEWS 2017年夏号を公開しました。
2017/05/01
VIEWS 2017年春号を公開しました。
2017/02/01
VIEWS 2017年冬号を公開しました。
2016/11/08
VIEWS 2016年秋号を公開しました。
2016/08/08
VIEWS 2016年夏号を公開しました。
2016/04/20
VIEWS 2016年春号を公開しました。
2016/02/01
VIEWS 2016年冬号を公開しました。
2015/11/01
VIEWS 2015年秋号を公開しました。
2015/07/26
VIEWS 2015年夏号を公開しました。
2015/04/12
VIEWS 2015年春号を公開しました。
2015/01/04
VIEWS 2015年冬号を公開しました。
2014/10/09
VIEWS 2014年秋号を公開しました。
2014/07/18
VIEWS 2014年夏号を公開しました。
2014/4/21
VIEWS 2014年春号を公開しました。
2014/1/23
VIEWS 2014年冬号を公開しました。
2013/10/08
VIEWS 2013年秋号を公開しました。
2013/07/08
VIEWS 2013年夏号を公開しました。
2013/04/08
VIEWS 2013年春号を公開しました。
2013/01/09
VIEWS 2013年冬号を公開しました。
2012/4/9
VIEWS 2012年春号を公開しました。
2011/10/12
VIEWS 2011年秋号を公開しました。
2011/10/12
VIEWSバックナンバーを追加しました。
2010/12/22
VIEWSバックナンバーを追加しました。
2010/10/14
VIEWS 2010年秋号を公開しました。
2010/10/10
Webサイトをリニューアルしました。

バックナンバー

2019年
2019年冬号(第56号)
2018年
2018年秋号(第55号)
2018年夏号(第54号)
2018年春号(第53号)
2018年冬号(第52号)
2017年
2017年秋号(第51号)
2017年夏号(第50号)
2017年春号(第49号)
2017年冬号(第48号)
2016年
2016年秋号(第47号)
2016年夏号(第46号)
2016年春号(第45号)
2016年冬号(第44号)
2015年
2015年秋号(第43号)
2015年夏号(第42号)
2015年春号(第41号)
2015年冬号(第40号)
2014年
2014年秋号(第39号)
2014年夏号(第38号)
2014年春号(第37号)
2014年冬号(第36号)
2013年
2013年秋号(第35号)
2013年夏号(第34号)
2013年春号(第33号)
2013年冬号(第32号)
2012年
2012年秋号(第31号)
2012年夏号(第30号)
2012年春号(第29号)
2012年冬号(第28号)
2011年
2011年秋号(第27号)
2011年夏号(第26号)
2011年春号(第25号)
2011年冬号(第24号)
2010年
2010年秋号(第23号)
2010年夏号(第22号)
2010年春号(第21号)
2010年冬号(第20号)
2009年
2009年秋号(第19号)
2009年夏号(第18号)
2009年春号(第17号)
2009年冬号(第16号)
2008年
2008年秋号(第15号)
2008年夏号(第14号)
2008年春号(第13号)
2008年冬号(第12号)
2007年
2007年秋号(第11号)
2007年夏号(第10号)
2007年春号(第09号)
2007年冬号(第08号)
2006年
2006年秋号(第07号)
2006年夏号(第06号)
2006年春号(第05号)
2006年冬号(第04号)
2005年
2005年秋号(第03号)
2005年夏号(第02号)
2005年春号(第01号)
これまでの特集
私が出会った芸術家
移民として生きる
持たない生活
マイアート
海外で第二次世界大戦の歴史に直面する時
トランプのアメリカ
女性と政治
ファミリー・ネームから考える家族関係
シングル・マザー
日本と海外の子育て事情
非営利団体(NPO)で働く
国際機関で働く
マイブーム ~ 私がいま夢中になっていること
世界の新年の祝い方
Eデート体験記
サッカーへの熱い想い
世界に散らばる家族
語学習得への道
40代の過ごし方
日本にいる高齢の親を想う
ソーシャル・メディア
留学の意義を再び考える
復興へ
離婚
地震
高齢になったら
ボランティア
各国出産体験記
受験事情あれこれ
医療保険
新しい日米関係
食を考える
身近に感じる経済不況
異文化の架け橋
女性の社会進出
NPO
2008年大統領選挙
ワシントニアンが伝授する知られざるDCの楽しみ方
環境:私たちにとっての地球
芸術
国際協力
医療
教育への思い
私の夏
戦後60周年特別企画II
戦後60周年特別企画I
ワシントンと私
連載一覧
ワシントンと私
人・マイライフ
世界の街から
世界の家庭料理
家族の風景
私の本棚
旅・ギャラリー
特別寄稿
随筆