子育てが楽しいって本当ですか!? (Stocker, Aki ) - WJWN(Washington Japanese Women's Network)

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家族の風景

子育てが楽しいって本当ですか!?:VIEWS 2015年秋号(第43号)掲載

(Stocker, Aki )

散歩でご機嫌の息子、母は昼寝がしたい
散歩でご機嫌の息子、母は昼寝がしたい

昨秋、待望の子供を授かった。とはいっても待望していたのは夫で、私は大人だけの生活に未練があり、アンビバレントな気持ちが隠せなかったのだが。私はどちらかというと母性に欠ける方で、子供が生まれる前、友人などが出産すると皆が「子育て楽しんで」と言うのを聞いて、「子育てって楽しいのかしら?苦行にしか見えないけど」と心密かに思っていた。さて、現在その子(男児)は14ヶ月。実際に子育てを始めての感想は、80%が苦行、20%が英語のfunというよりjoyという感じ。でもつらくても笑顔と寝顔が可愛くて頑張ってしまうのは、生物学的にそのようにプログラムされているからだろうか?新米ママが感じたり、考えたことを紹介したい。

最初の3ヶ月:地獄の「トリプル授乳」

私の両親は日本におり高齢で、アメリカ人の夫の両親はすでに亡く、親戚も近くにいない。出産・育児は基本的に夫婦2人で乗り切る計画を立てた。2週間早く生まれた息子は、未熟児スレスレ。アメリカでは出産後、翌日には病院から退院させられるが、私は帝王切開だったので3泊休ませてもらい退院。3時間おきに、母乳、不足分を粉ミルクで補い、寝かし付け、ポンプで搾乳し、ポンプの部品を洗って、また泣き出す赤ちゃんに授乳というサイクル(いわゆる「トリプル授乳」)を繰り返す日々がスタート。赤ちゃんは3時間しか寝てくれず、しかもグズッて寝付かしに時間がかかると、ポンプで搾乳する時間すらなくなることも。当然ながら睡眠時間はここで1時間、あそこで30分という感じ。睡眠不足で朦朧としているところへ、私にはわからない理由で赤ちゃんが泣き出すと(振り返るとゲップをさせるのが下手だったのでお腹の気持ち悪かったのが原因)もう頭が真っ白に。幸い、気が長く温和な夫がなんとか赤ちゃんをなだめてくれた。あまりに苦しくて友人の先輩ママたちに「いつになったら楽になるの?」と何度も何度も聞いたが、「今言うと、がっかりするだろうから、まあとりあえず今を乗り切って」「うーん、4歳くらいかなという答えが返ってきた。

ちなみに:Dr. Harvey Karpの本「The happiest baby on the block」が役立った。なぜ赤ちゃんは泣くの?ずっとこんな風に泣き続けたらどうしよう?どうしたら泣き止ませることができるの?という問いに答えが見けられ、安心できた。

ちなみに:アメリカの育児休暇制度は貧弱である。Family and Medical Leave Actによって、一定条件を満たした労働者(基本的には正社員のみ)は無給で12週間の休みを取る権利を保障されているだけである。パートタイムの人は休みを取る権利さえなく、福利厚生の手厚い一部を除き多くの企業は、休業期間中、給与は支払ってくれない。私の勤務先も、休みの間は無給なため、蓄積してあった病気休暇や有給休暇を使い、9週目からパートタイムで勤務を再開した。ただ、夫もこの法律に基づいて休暇を取得できるため、4週間の休みをとり全面的に子育てをしてくれたほか、私がパートタイムで復帰してからは、夫もパートタイムで勤務し、交代で息子の世話をすることができた。

子育てのしやすさを日米比較すると、制度面だけをみれば日本の方が充実しているように思う。しかし、実際の制度の利用しやすさと言う点ではアメリカの方が恵まれているのかもしれない。少なくとも、私と夫のいずれの職場でも、「休まれると迷惑」という雰囲気はなく、上司も同僚も組織の枠内でできるだけ私たちの要望を満たせるように協力し、不在の間に仕事を滞らせないようにするために知恵を絞ってくれた。「誰でも家族のいろいろな事情で休まなければならないことがあるのでお互い様」、「権利だから当然」という考えが行き渡っていて、休んだせいで労働者(組織の戦力)としての評価が大きく下がるという感じは受けなかった。

3ヶ月から6ヶ月:産後うつ?保育所スタート

母乳と粉ミルクの混合は搾乳するのがあまりにも大変で、3ヶ月で断念し、粉ミルクに一本化した。母乳育児にはさまざまなメリットがあり、若干IQが高くなるというデータもある。「母乳で育てていたらハーバード大学に進学できたかも」などと夢想して、母乳をあげられない点に少し罪悪感を感じたが、「自分ができる範囲で最善のママになるしかない」と悟りを開く。それでも体力的につらくて、どんどん心がブルーに。子供が生まれるまでは想像もつかなかったが、子育てはまさに24/7(24時間365日営業)。長い一日を終えても夜も赤ちゃんの世話は続き、やっと週末になっても平日と同じだけのアテンションを赤ちゃんは必要とする。自分のことをする時間はゼロ、お風呂にさえろくに入れない状況で、赤ちゃんの泣き声にオロオロ、イライラして訳もなく涙が出るようになり、産後ウツかもと、産婦人科医を訪問。「何もかもが嫌」「夫にムカつく」「赤ん坊の泣き声にイライラする」「夫と子供を置いてどこかに行ってしまいたくなる」などと話すと、いろいろ質問された後、「寝ていないので疲れているだけで大丈夫ですよ。小さい赤ちゃんのいるお母さんは多かれ少なかれそんな気持ちになるもの。赤ちゃんや自分を傷つけたいと思わない限り心配しないでいいですよ。とにかく上手に休む方法を見つけてください」とのこと。一安心。夫がLet Mommy Sleepという夜間、准看護師資格を持つスタッフを自宅に派遣して赤ちゃんの世話をしてくれるサービスを依頼。一晩250ドル近く掛かったが、出産後初めて連続して7時間睡眠でき、ちょっと気力回復。「ずっとじゃないから、お金で買えるものはお金で買って乗り切ること」との友人のアドバイスを座右の銘にすることに。

私がフルタイムで職場復帰するため、息子は生後5ヶ月で保育所に行き始めた。妊娠する前から申し込んであった夫の職場にある保育所に入ることができ、夫と息子が朝夕一緒に通勤・通所し始めた。朝、保育士さんに預けると絶叫する息子に心が痛んだが、「ひどいように聞こえますが、この年齢ならout of sight, out of mindで心配いりません」とのこと。同じ建物内にいる夫が時々見に行くと「なんとかやっているみたい」とのことで一安心。と間もなく、聞かされてはいたが次から次へと風邪をもらってきて熱、咳、鼻水を出し、保育所を休まなければならず=夫もしくは私が仕事を休まなければならないことにになった。最初の2ヶ月は半分くらいしか通所できず、鼻づまりで呼吸が苦しそうな息子と空気を加湿するためにお風呂場にこもってシャワーを流しながら、仕事を続けられるか不安が募った。

ちなみに:アメリカの保育所は、公費補助があるわけではないので、親が仕事をしている、していないにかかわらず、お金さえ払えば利用できるが、かなり高額である。地域やサービスによって幅があるが、夫の勤務先にあるという利便性を優先させて我が家が選んだ保育所の保育費は1ヶ月約1800ドル。NPOで働く私の給与では、費用だけを考えれば仕事を続けるか辞めるか迷う額である。2人目の子供が生まれたら、2人分の保育費は負担できないので、給料の低い方が仕事を辞め、子育てに専念するという選択をする夫婦も結構多い。

6ヶ月以降:ようやく春

ようやく春が来て、桜も咲き、保育所通いも軌道に乗り始めた。夜は連続して6時間くらいは寝てくれるようになり、当初、保育所で昼寝ができず大変だったが、それも4ヶ月くらいかかったがしっかり3時間寝てくれるようになった。夏の間はあまり風邪を引かず、公園で芝生の上で遊べるようになり、1歳の誕生日を過ぎた頃には、歩くようになり、さらに、こうしろ、ああしろと、だんだん自己主張してbossyになってきた。今でも、夜中に何度も起こされるし、週末でも朝は6時半に起こされ、昼寝の時間以外は目が離せず、気が休まらない。体が大きくなったおかげで、泣き声も大きくなり、ご機嫌斜めのときの扱いは大変だ。10キロを超えたので長く抱っこすると腰痛と肩こりがひどい。食事はゆっくりできないし、トイレにもゆっくり行けない生活は続いている。「子育てなんて全然楽しくない!」と思う。でも、初めの頃、ずっと握ったままで汗がにじんでいた小さな小さな手が、2倍くらいの大きさになり、チェリオ(O型のシリアル)を摘まんで自分の口に入れられるようになったり、ケタケタ笑いながら口を開けたキスをしてくれたりすると(口を閉じてキスすることがまだわからないので)、「可愛いすぎ」と私の心はメロメロになる。

いつか人生の幕を閉じるときに、息子とのこんな思い出を持てたことを幸せに思うかもしれない。世界中のママとパパに親近感と共感を感じる今日この頃である。

著者紹介

(Stocker, Aki )

在米13年。夫、息子、猫1匹とワシントンDCで暮らす。非営利団体に勤務しながら、子育て中。



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