Make America Great Again/トランプのアメリカ:トランプ支持者の声 前田 Wain 裕子(Maeda Wain, Yuko) - WJWN(Washington Japanese Women's Network)

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特集 トランプのアメリカ

Make America Great Again/トランプのアメリカ:トランプ支持者の声:VIEWS 2017年春号(第49号)掲載

前田 Wain 裕子(Maeda Wain, Yuko)

個人的には、自分から政治の話はしない主義である。しかし昨年は、周りの人々との会話の中で大統領選挙のことが本当によく話題になった。例えば、トランプ氏個人の性格や容姿に対する嫌悪に近いものから、彼の言動についての批判、大統領としての才覚や器量に対する危惧。私の住むメリーランドの町は、ワシントンDCにも近く、リベラル色の強い地域で、周りの友人知人はリベラル派が多い。したがって、トランプに対する批判や反感をはじめ、「もし彼が当選したらどうしよう」という不安や心労までを文字通り見聞きした毎日であった。こうした批判的な姿勢はメディアの報道でも主流だった。

しかし、全米レベルでは、トランプを支持する人々は多くおり、彼らはトランプの功績や手腕を高く評価し、過去8年間のオバマ政権のリベラル政策路線からの脱却に期待を寄せている。選挙前に一部のメディアは、トランプ支持者は田舎に住む低学歴の労働者層の白人男性がほとんど、トランプは大統領選に勝利できないという見方を報じていた。しかし、ふたを開けてみるとミシガン州、ペンシルバニア州、ウィスコンシン州など、ヒラリー優勢と言われた州においてもトランプが勝利するなど、トランプを支持する人は数多くいたのだ。積極的にトランプ支持を主張しなかった人でも、二人の候補者を比べたとき、トランプに票を投じたのは、何らかの理由があったのだと思う。

ところで米国生まれの私の夫は、昭和一ケタ生まれの日本人の母と北欧系アメリカ人の父を持ち、ワシントンDC郊外の保守的な家庭で育った。そして、今回の大統領選ではトランプに投票し、トランプ政権に期待している。一市民の声として、なぜトランプを支持し、トランプのアメリカに何を期待しているのかなど、インタビュー形式で紹介したい。メディアではあまり取り上げられないトランプ支持者の声、トランプ政権に期待する理由などについて、知っていただけたら幸いに思う。

どうしてトランプを支持するのか?

トランプ政権は、過去8年にわたるリベラルなオバマ政権を受けて誕生した。これまで世界的にも政治がリベラル化する風潮は広がってきたように見受けられるが、それは必ずしもよい傾向とは思わない。そこに自分の懸念がある。世界的に保守勢力が強まっているのも、リベラルな風潮に対する反動だと思う。自分の理想とするアメリカは、様々な困難を受け止め、それに耐え、競争に勝ちうる揺ぎない強さを持った国だ。現行のリベラルな流れは、必ずしもそれを実現するものではない。

自分がトランプを支持する理由は2つある。まず1つには、「個人の生活に政府が介入する度合いを減らそう」というトランプの考えに同意するから。もう1つは、「偉大なアメリカの再生、世界で優位に立つアメリカ」を強調するトランプに共感するからだ。そのためには、他国に対し圧倒的に優位な軍事力も必要だ。

「個人の生活への政府介入の度合いを減らす」とはすなわち、不必要な法規制を減らし、数々の州や連邦政府のプログラムを縮小することだ。個人が自分の責任のもとで、自由に仕事や趣味に打ち込める環境は自分にとって大変大切なことであり、長期的に社会全体にもよい影響をもたらす。もちろん規制が緩やかになることで、社会コストもついてくる。犯罪率や犯罪者の増加、富裕層の拡大や富の不均等な分配などはその一例だろう。が、そのコストを支払っても、規制、法律でがんじがらめにされるよりは、個人が自由を謳歌することができる社会がもたらす利益は大きい。規制の多い環境は、社会から柔軟性を奪う。国民に自由な思考を許し、柔軟な創造力に富んだ社会は、アメリカという国の誇るべき強みだと思う。

また、揺ぎない圧倒的な強さをもつ軍隊をもつことは重要であり、必要だと思う。私たちの国と生活は、軍事力によって守られている。たとえば今日、メリーランドの海岸で何の心配もなく子供たちが遊べるのは、アメリカ沖2000マイル先の米軍基地で我々の軍隊が常に目を光らせてきたからだ。日米関係の歴史を例にとってみる。第二次世界大戦前、日米のどちらかが道徳的に正しかったとか間違っていたわけではない。しかし、厳しい対日経済封鎖と政治的解決の失敗によって大戦に突入し、双方ともに激しい戦いがあり、強力な武器が使われ、多くの命が奪われた。結果的には、アメリカが軍事的な勝利をおさめ、勝者と敗者がはっきり決まった。勝者であるアメリカは、戦後の日米関係、日本の政治や社会の在り方にまで影響力を持つことになった。アメリカの軍事的な勝利なしには、今の日米関係やアメリカや日本はあり得ない。 

今日においても、アメリカの軍事力によって、私たちの生活は守られている。私たちが当然のものとして享受している平和な社会は、アメリカ建国以来、先人たちがアメリカの安全を守るという信念と行動によって成り立ってきたものだ。平和は何もしないでは手に入らない。人間の本能として常に戦いは起こりえる。強い軍隊は私たちの生活のためにも必要なのだ。

政府介入を減らすことの利点を、もう少し具体的に説明すると?

オバマ政権の8年間、社会的弱者を援護する名目で多くの連邦プログラムが積極的に導入され、拡大された。貧困地区の公立校で朝食を出すプログラムを例にとってみよう。こうしたプログラムは、親が不在だったり、親が子供に無関心な家庭の子供にまず学校に来させて、おなかがすかないようにし、授業に集中させるのを目的としており、それ自体は悪いことではない。しかし、子供に衣食住を提供し、家庭内でのしつけやマナーを教えるのは、親の基本的な役目ではないか。親がしないからといって、税金と労力を使って、政府がそうした基本的な役目を代行しようとしても、まず到底追いつかない。そして、いつまで経ってもこの悪循環を断ち切ることができない。人に頼り、責任を転嫁することが当たり前になり、そうした子供たちが大人になって、また同じことが繰り返されていく。「勉強ができないのは先生のせい、定職に就けないのは社会や企業の差別のせい、犯罪を犯すのは悪い友達のせい、逮捕されてもそれは警官の差別のせいで自分は悪くない、だから政府に守ってもらう必要がある」といった人任せの態度を助長するだけだ。

個人の責任はどこへいったのか?親だったら、人のせいにしないで自分の子供をしっかり育てていくという責任がある。時間はかかるが、この悪循環を断ち切って、人々の考え方を変えていくことで、社会を変えていくべきだ。ヒラリー・クリントンは”It takes a village.”という表現を使った。教育や社会をよくするには「村全体で」「みんなで」なんとかしましょうと言う意味だろうが、「村全体」は不要だ。前述のとおり子供の教育に一番必要とされているのは、親だからだ。

では軍事政策について。トランプは“アメリカの敵”に対して攻撃的ともとれる強い態度で立ち向かうべきという姿勢だが、こうした強硬な姿勢は、アメリカを戦争に巻き込む可能性を高めると思うか?

アメリカは今や、対外影響力の大変大きな国だが、もともと民主主義や資本主義の価値観を諸外国に広めることを目的に、さまざまな対外活動を行ってきたわけではない。こうした対外活動は純粋に、他の国からアメリカの貿易や経済を守り、それらを助成し、ひいてはアメリカ国民の安全を保障することを目的としてきた。そのために政治が動き、軍事行動が行われてきた。

アメリカ史上初の海兵隊の海外派遣は1804年にさかのぼるが、それは、リビア沖における米国の貿易船を脅かすイスラム系の海賊を取り締まるためという理由だった。また、ジョージ・ワシントンの時代には初めて海軍艦艇を就役させ、自国の外交政策の成功を図った。以後200年以上にわたって、アメリカは実に大小180以上の戦争や紛争にかかわってきた。米軍は今日も世界のどこかで活動を続けており、その意味では、規模はさまざまだが、常に戦争に関わってきたといえる。

トランプの“アメリカ優先” America Firstの考え方をどう思う?

「自国最優先」と聞けば、なんと自己中心な考え方と少し驚かれる向きもあるかもしれない。だが、一国のリーダーであれば、自国の総合的な利益(つまりは国民の安全や政治、経済、社会の安定)を優先した上で他国との交渉を進めることを求められるのは当然のことだ。彼の主張は大変ストレートであるが、言っている含みを考えれば筋の通ったことだ。

トランプが展開しようとしている貿易政策も、アメリカの利益(米企業や労働者の利益)を第一に考え、二国間交渉を進めようとしているにすぎない。そもそも、国家間に100%の「自由貿易」というものは存在しない。だから、国家間の貿易にある程度、政府が関与するのは当然だ。アメリカの州と州の間を例にとっても、商品やサービスの取引はすべて自由ではなく、州税がかかったり、売り買いしてもよい商品が限られたり、ある程度の制限がついてまわる。これが現実だ。

移民政策についても同様。不法移民の取り締まり、国境管理はこれまで十分行われてこなかった。アメリカの国益上、不法移民と国境の管理をすることは重要であり、トランプはそれを公言し、政策を進めようとしているだけだ。

これまで述べてもらったような価値観はどのようにして形成されたのか、そのあたりのことについて、読者の方も興味があるかもしれないので、自己紹介を

母親も妻も日本人なので、日本にはとても愛着を感じている。日本を訪れるたびに、人や文化、歴史、価値観に触れ、自分の内面に日本という国と文化が与えてくれた影響は実に大きいと思う。しかし、愛国心ということになると、自分が忠誠を誓った国はアメリカだ。

両親は教育熱心で、ともに独立精神にあふれ、保守的な考え方の持ち主だった。父は経済学者、母は大学院で地理学を勉強した科学者だったが、姉と自分が幼い間、母は仕事をしないで家にいた。のちに姉も自分も大学院に進んだが、それは両親の影響が大きかった。両親ともにそうだが、とくに母親は子供たちが自分で考え、責任をもって行動できるよう、躾にはとても厳しかった。

大学卒業後、米陸軍に士官として勤務したが、それは国に奉仕することの重要性を説いた両親の影響だ。特に母親は外国(日本)出身だったが、母から祖国(つまり自分にとってはアメリカ)に対する愛国心と国民として果たすべき義務の重要性を叩き込まれた。ダグラス・マッカーサーが名門ウェスト・ポイント陸軍士官学校のモットーである、「義務を果たす者ありてそこに名誉あり、名誉を重んずるものありてそこに祖国あり」(Duty、Honor、Country)について有名なスピーチをしたが、まさに自分の価値観はそこに集約されていると思う。母は日本の戦前教育を受けた元愛国少女だったが、その非常に日本的な母が、自分に祖国を敬愛することの大切さを根本から教えてくれたと思っている。

最後に読者に対して、何かメッセージを

アメリカ人として誇りを持って言うが、アメリカほど個人の自由を尊重し、誰にでも経済的、社会的に成功する可能性と機会を与え、国民に高いモラルがある国はほかには例がないと思う。アメリカ社会には非常に様々な人種が共存し、さらに他にないユニークな政府制度と強い軍隊とが共存する。一見すると不調和にみえるこのコンビネーションが、皆が協力して国民としての義務を果たすことで、まさにアメリカの強さになっていると思う。

アメリカに来て永住することを考えるのなら、人種や宗教、習慣、言語の「違い」に固執するのではなく、アメリカ国民としての「共通性」の方を重視し、この国のために協力し、各人に何ができるかを問うべきだ。そして、有事の際にはアメリカのために戦うことを厭わない覚悟も必要だと思う。

著者紹介

前田 Wain 裕子(Maeda Wain, Yuko)

名古屋出身。日本貿易振興会・東京本部勤務を経て、米国アメリカン大学国際関係学修士号(1995年)取得。1995~2001年、野村総合研究所ワシントン支店勤務。経営学修士号(2000年)取得後、現在は夫とともにワシントンDC周辺での不動産開発と不動産管理の仕事にかかわっている。



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