結婚5年目の新スタート 深見 真希(Fukami, Maki) - WJWN(Washington Japanese Women's Network)

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結婚5年目の新スタート:VIEWS 2017年夏号(第50号)掲載

深見 真希(Fukami, Maki)

結婚5周年はハワイで。きれいな海を前に、<br />「ふたりの子供とハワイにいる。こんな日がくるなんて5年前は想像もしていなかったなあ」<br />と夫もしみじみ。
結婚5周年はハワイで。きれいな海を前に、
「ふたりの子供とハワイにいる。こんな日がくるなんて5年前は想像もしていなかったなあ」
と夫もしみじみ。

のっけから私事で恐縮ですが、今年6月に結婚5周年を迎えました。これすなわち、本格的にアメリカに住むようになって5年、ということ。2010年の夏、ジョージワシントン大学の客員研究員としてワシントンDCにやってきました。ベセスダのアパートを借りて、メトロのレッドラインでファラガットノースまで通う毎日。同じアパートに住んでいた夫と知り合い、1年後一旦日本に帰国して、もうまた1年後にお嫁入りで戻ってきました。

夫は超ドメスティックなアメリカ人

夫はアメリカ人で生粋のベセスダ育ち、しかもドメスティックな事業をファミリービジネスで営んでいるので、いわゆる「国際経験」は殆ど皆無。たまたま日本人の私と結婚しましたが、「所詮人は人。その気になればすぐわかりあえる」と国際結婚の易しさを標榜しておりました。そりゃそうだ、彼の生活は何も変わらないもの。いっぽうの私は、何もかもが初めて尽くし。感謝祭、クリスマス、イースター、メモリアルデー、独立記念日にハロウィーン。どれもこれも、なにがスタンダードなのか皆目見当もつかない有様。なのに、結婚した最初の年、いきなり感謝祭とクリスマスを我が家がホストすることになり、てんやわんやしたのを懐かしく思い出します。

結婚に伴うグリーンカードの手続きを進めながら、彼の実家を中心としたあらゆる年中行事、に加え、義母の手術&入院、義兄の結婚式、自分の結婚式、二度の引越し、二回の妊娠出産、下の子の入院を、起業の傍らでやった5年間。我ながら、ずいぶんと濃い5年でした。

その盛り沢山の5年間、それはそれは色々ありましたが、もっとも計算がちがったのが、何を隠そうこの「夫」。特に上の子を妊娠した頃、アメリカに来て間もない私は実家に頼ることもできず、悪阻もひどく、仕事もきつく、毎日地べたを這うように生きていました。頼れるのは彼だけ、なのですが、そこのところが伝わらない。そのうち英語で話すことも億劫になって、ひとりで暗い部屋で黙って過ごしていたのを思い出します。今となっては笑い話ですが、お腹のなかの娘にむかって、「ママとふたりで生きていこうね」と何度問いかけたかわかりません。下の子を妊娠した頃には、私もだいぶアメリカ流のコミュニケーションが身に付いてきて、彼に要求や注文をできるようになりました。最初こそ「どうして言わないとわからないんだ」と腹も立ちましたが、アメリカでは、仕事にしろプライベートにしろ、何事につけ「自分はこうしたい」「あなたにはこうして欲しい」ということをはっきり伝えなければ流されてしまう、と学びました。いちいち声をあげるのも体力が必要で、時々血圧まで上がりますが、そうやって闘ってこそ自分の欲しいものが手に入るというものでしょうか。そんな夫との生活のおかげで、意見したり要求したり拒否したりすることにだんだんと抵抗がなくなり、確かに、自分に正直に毎日を過ごせるようになりました。これが自分らしく生きるということなのかなあとも思ったりして。

夫にも国際体験教育

そうはいっても、私の苦労――外国人が異国で暮らす大変さも、彼にわかってほしい。今年、ちょうど仕事の都合もあり、子供達も一緒に日本に連れていくことに。夫はこれまで二度日本を訪れていますが、どちらも観光客程度の滞在。今回は「実際に暮らす」をテーマに3週間アパートを借りて、ひとりでお使いにも行かせました。外出先も専ら、区役所や市の子供センター、近所のスーパーや病院など。

アメリカに帰る日が近づいた頃、彼が言いました。「日本とアメリカは全然違う。僕はそれをまったく理解していなかった。今でも完全に理解できているとは言わない。やっと理解し始めたところだ。だけど、とにかく、違うってことがよくわかった。」

「人は人、わかりあうのなんて簡単だ!」なんて、あっけらかんと言い放っていた5年前からすると、なんと殊勝な言葉でしょう!こうやって日本に来るのは、お金もかかるし大変だけど、子供達だけでなく、夫のためにも(私たちの結婚生活のためにも)大事なことだなあと改めて思ったのでした。

一方の私も、ちょうどベセスダ暮らしに慣れてきたところ。地元福岡から京都に移り住んだときもそうでしたが、私の場合、言葉が操れるようになり、土地勘が出てきて、その土地の泳ぎ方がわかるようになってくるのに、だいたい5年かかります。ここベセスダでも、最近になって暗黙のルールやマナーを含む土地勘ができ、社交マップが読めるようになり、クレジットヒストリーも出来上がり、この土地に住む人間として、ようやくスタート地点に立てたような気がしています。

違いを超えて夫婦の絆は強まる...か?

昔出会った、ある国際結婚カップル。「国際結婚って本当に大変よ、こんなに大変だってわかってたら結婚しなかったわ」と奥さんが言い、傍らでご主人も頷いていました。とっても素敵なご夫婦でしたが、もうお孫さんもいらっしゃる長い結婚生活をそんな風に振り返るのは、ちょっと寂しい。いま、私もその大変さの渦中にいますが、どうせなら、大変だけどその価値はあるよと言えるようになってみたい。そのとてつもなく果てしない道のりを前に途方に暮れつつ...互いの違いがわかり始めた5年目。夫も私も、これからが正念場です。

著者紹介

深見 真希(Fukami, Maki)

京都大学博士(経済学)。日本学術振興会特別研究員、ジョージワシントン大学客員研究員等を経て、米法人グローバルレジリエンス研究所(IIGR)を設立。国際危機管理者協会(IAEM)理事/日本評議会会長。一女一男の母。



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