片思いの行方 原津 美砂(Haratsu, Misa) - WJWN(Washington Japanese Women's Network)

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人・マイライフ

片思いの行方:VIEWS 2017年秋号(第51号)掲載

原津 美砂(Haratsu, Misa)

東京でブラジル人ゲストを案内した時に。筆者は右から2人目
東京でブラジル人ゲストを案内した時に。筆者は右から2人目

15歳の出会い

私がブラジルと出会ったのは、15歳の時。バレーボールの国際大会で、当時世界最強だったソ連(!)チームに、ブラジルチームがフルセットの末勝利するというすごい試合を観て、大活躍したイケメンブラジル選手の大ファンになってしまったのである。それがきっかけとなり、地球の裏側のブラジルという国に興味を持ち、いつか生活してみたいと思うようになった。インターネットがない時代の地方都市の一女子高校生だった私には、ブラジルに留学するという手段しか思いつかず、ブラジルの大学と交換留学制度のある大学に入学し、ブラジルの公用語であるポルトガル語を専攻し、目的どおりブラジルに留学した。

ブラジルへの留学

当時のブラジルは、一人当たりGDPが約2,700ドル(2011年時点で13,000ドルまで上昇)という状況であり、周囲の中流家庭では洗濯機も電話もないのが当たり前だったので、衣類の洗濯はすべて手洗いで乗り切った。また、1980 年代前半に発生した債務危機に端を発し、年率 1000%を超えるような高インフレに見舞われており、旅行の行きと帰りで長距離バスの運賃が倍に値上がりし、手持ちの現金が底をついたため、残りの旅程を飲まず食わずで過ごすようなこともあった。インフレにおいつかない待遇の改善を要求する大学教員のストにより3ヶ月近く休講になり、そのまま留学を続けるべきかどうか悩んだこともあった。当時私を送り出した両親の年代になり、このような状況の国によくぞ20歳そこそこの娘を留学させてくれたものだと思う。

しかし、日系人含め日本人がいない小さな町で、日本コミュニティから離れ、学生としてブラジルの中流家庭の人たちとつきあい、同じような生活をしたことは、あの時しか出来なかった貴重な経験であった。

その後のキャリアパス

その後、土砂降りといわれた就職戦線の中、ブラジル留学経験を唯一評価してくれた開発援助実施機関に就職した。ブラジルで知り合った日系パラグアイ人の実家があるパラグアイの入植地に遊びにいった際に、日本の援助によって整備された水道の効果を見て興味を持ったのが、応募したきっかけである。そこで約4半世紀働いた後、現在、ワシントンDCに本部を置く、中南米の社会経済開発を支援する国際機関に派遣されて勤務している。

実らぬ想い

…と書くと、希望通りのキャリアを実現したサクセスストーリーのように見えるが、細かいこを説明すると、実は全くそんなことはないのであった。

実は、中南米関連の業務に従事してきたのは、社会人人生の半分にすぎず、しかも中南米といってもブラジル以外の国を担当しており、せっかく学んだポルトガル語も、業務上の必要性から習得したスペイン語に上書きされてしまった。ブラジルへの熱い想いは私の一方通行であって、向こうは私に振り向いてくれなかったのだ。人間相手の失恋なら、物理的に離れることで復活できるが、この失恋相手は中南米関連の仕事をしていると常に視界に入ってきて、しかも存在感が大きく、見ないフリもできないのだ。視界の端で、ブラジルを担当する同僚が活躍する姿を見て、そうなれなかった現実に落ち込んだりしたものだ。

ご縁がなかった?

確かに、物事には縁というものがあり、それほど苦労せずにその縁とうまくマッチする人と、そうでない人がいる。しかし、そもそも高く熱い志がある人なら、縁があろうとなかろうと、落ち込んだりせず、開けてもらえるまで扉をたたき続けるだろう。考えてみれば、東京の大学に進学し、そしてあの時代のブラジルに留学できたことだけでも、十分すぎるチャンスを与えてもらったのに、その後うまく活かせなかったのは、自分自身にビジョンもパッションもなかったからであり、振り向いてくれなかったから落ち込むなんてお門違いも甚だしいのであるが。

新たな展開

しかし、最近になってちょっと風向きが変わってきた。東京に住んでいた頃趣味でボランティア観光ガイドをやっていたのだが、まだ自分のガイド内容に自信がもてないでいた頃、初めて私のガイドを評価するレビューを送ってくれたのはブラジル人ゲストだった。リピーターになってくれたのも、その後のお付き合いが続いているのもなぜかブラジル人ばかり。ガイドした人数の比率からいえば、スペイン語圏のゲストが圧倒的に多いというのに。また、昨年から派遣されている現在の職場で、最初に仲良くなったのはブラジル人の同僚で、それをきっかけにその他の同僚のコミュニティに入ることができたりと、ここにきて、地味ながらブラジルに助けられているなあ、と思うことがちょこちょこと増えてきた。

頼れる幼馴染に

出会って30年。かつての片思いの相手は、いつの間にか頼れる幼馴染のような存在になっていた。これも悪くないかも…と思えるのはトシをとったからだろうか。できればこの関係を維持したいところであるが、どうしたらいいのかはなかなかの難問である。

ブラジル人ゲストのガイドレビュー
ブラジル人ゲストのガイドレビュー

著者紹介

原津 美砂(Haratsu, Misa)

広島県広島市出身。上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業後、途上国開発援助の仕事に従事。2016年8月よりワシントンDCの国際機関に勤務。



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