新しく伸びる『枝』 バレエとギター 駒形 洋子(Komagata, Yoko) - WJWN(Washington Japanese Women's Network)

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特集 マイ・アート

新しく伸びる『枝』 バレエとギター:VIEWS 2017年秋号(第51号)掲載

駒形 洋子(Komagata, Yoko)

頭の修練?身体の仕組み、動きや演奏のコツを知って少しでも上達できれば
頭の修練?身体の仕組み、動きや演奏のコツを知って少しでも上達できれば

週に2回バレエの、不定期だが平均すると2週に1回ギターのレッスンがある。
何であれ新たに始めるには人それぞれ理由があると思うが、始まりは単純なものだった。

バレエを始めたきっかけ

30代半ばで出産し40歳を過ぎて、腕を上げた時の腋の下のラインがシャープでなくなったことが気になりだした。娘はまだ小さく、仕事もあり、漠然と「何か身体を動かさないと」と思いつつ日々を過ごしていた。そんな頃、新聞の折り込みチラシで新規バレエクラスが地元の街でスタートすることを知った。

バレエ!新規のビギナークラス!素敵!と思った。しかし、はたして自分がついて行けるのか(子供の頃にだってバレエ教室に足を踏み入れたことすらない)、ほかの受講者は経験者かも、などと何回も逡巡したが、3ヵ月ごとの更新だし、ダメならいいか!と自分で納得し、始めたのが16年前。今では週2回火曜の夜と土曜の朝のレッスンは、みごとに日々のルーティンとなっている。

レッスンの必需品と、3年目に行われた舞台発表会の時の写真。娘もこの年にスタートした
レッスンの必需品と、3年目に行われた舞台発表会の時の写真。娘もこの年にスタートした

ギターに再挑戦

ギターはもう少し偶然が重なってレッスンを始めた。中学から高校にかけて友達とバンドを組み、アコースティックギターでリードギターを弾いていた。オリジナル曲もあり、当時ラジオの公開放送で演奏したりして、ちょっといい感じだったかもしれないが、友達の話だと高校生の途中で私が「かったるい」と言ってバンドは解散(私は覚えていない)。

それ以来、当時弾いていたギターもいつの間にかどこかに行き、7年前まで思い出すこともなかった。その頃、娘が聞いていた人気グループ『嵐』の「風の向こうに」のアコースティックギターを耳にして、「ギターいいな」と再発見した。そうしたら、毎週のように訪れていた地元のカフェで、たまたま居合わせたお客さんがギターを持ってきていた。聞けば、もう弾かないので買ってくれる人を探しているという。その場で譲ってもらった。

ギター入手。久しぶりに弾くギターの音色で、指と心に色んな記憶がよみがえり、心に響いた。ほどなくして娘の高校で父兄対象のクラシックギター講座があることを知り、何だかギターの「流れ」が来ているなあと思い、クラシックギターをゼロから始めることにした。クラシックギターの奏法は私が弾いていたアコースティックギターとは違い、メロディと伴奏を1本のギターで可能にする。それを昔からどうやって弾くのか不思議だったので、この流れに乗って学んでみようと思ったのだ。

出来なくても楽しい

さて、どちらも始めてみると出来ないことの連続だった。

特にバレエは経験ゼロからのスタートで、文字通り右も左も分からないだけでなく、ステップや動きの名称がフランス語という、頭も身体もフル回転の1時間半。大きな鏡に映る自分の姿も気になるし、レッスン終わりには、冷や汗とともに汗だくだった。でも何故か面白い!と思った。わからないことばかりだけど楽しいし、新規のビギナークラスで初めての人たちばかりだったのも幸いした。今でもそうだが、レッスンの間は頭の中がバレエのことだけに集中するので、終わると身体は爽快、頭の中もリセットされた状態になる。もうひとつ、40を過ぎて人前でダメな姿をさらして、まだまだだと気づくことも、自分の精神に何かプラスになっている気がしている。

ギターの難関は何といっても発表会のソロ演奏。レッスン1年目の発表会では、それまでの50年を超す人生の中で何よりも緊張して、どうなるかと思ったが、途中から気を取り直し何とか最後までたどりついた。その後、何回か人前でのソロ演奏に慣れるために、仲間うちでの「あがり克服演奏会」への参加やクラス内発表をした。しかし、毎年度終わりの発表会を経ても、毎回緊張して曲の途中までは練習のときのような演奏にならない。けれど、デュオやアンサンブル演奏で曲を合わせる時の楽しさは、本当に気持ちがいい瞬間だ。デュオは、相手との相性も演奏に影響する。互いに寄り添って、心がシンクロするような感覚は、純度の高い喜び。気心の知れた人との演奏は、心が豊かになる。

居間の練習定位置。譲り受けたギターを皮切りに5本目になる軽量ジュニアギター
居間の練習定位置。譲り受けたギターを皮切りに5本目になる軽量ジュニアギター

とはいえ、やはり出来ないと、自分の中の負けず嫌いが発動し、上手になりたい願望がある。直接関連する教則本はもちろん、身体の仕組みを解説したもの、緊張克服の秘訣、日本古来の身体の使い方などなど、さまざまな書籍で、頭の中で理解しつつレッスンと練習のヒントにしている。

バレエは家でできるのはストレッチぐらいだけれど、ギターはいつでも弾けるので、午前中の仕事に出る前、夜は帰宅し食事をして、11時過ぎにギターに触るのは日課になっている。そう言うと、ギター仲間には驚かれるが、いつも居間にギターを置いているので、自分では「練習」という気持ちはなく、テレビを見るような感覚でギターをつい抱えてしまう、という感じだ。

その時々の練習曲を、すこしずつ身体の使い方や意識の置き方を変えながら繰り返し弾いていると、いつの間にか自分とギターと曲がひとつになる集中の瞬間が訪れる。それが気持ちいいので、自然といつまでも弾いてしまい、2~3時間があっという間に過ぎる。

しかし、バレエは16年、クラシックギターもついこの間始めたと思ったけれど既に7年が経つ。40歳過ぎてバレエを始めて少し経った頃、限りなく低い階段を少しずつだが上って前進している実感があり、それがちょうど自分の人生の大きなサイクルの中では出来なくなることが増えていくんだな、と何となく感じた頃、プラスマイナスゼロとまでは言わないが、別の枝が伸びていくような感じだった。ギターもまた新しい枝だ。出来ないことは「ま、いいか」と深刻にならず枝が伸びていくのを楽しんでいる。

著者紹介

駒形 洋子(Komagata, Yoko)

1957年生まれ。東京都出身。マーケティングのコンサルティング会社勤務。父親の転勤をきっかけに20代にロサンゼルスとニューヨークに滞在。帰国後、モデルエージェンシー、イタリアやアメリカのデザイナーブランドの広報を経て、2000年から現職。趣味はクラシックバレエとクラシックギター。



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