The Gentle Art of Swedish Death Cleaning 優しいスウェーデン式断捨離法 辛くも悲しくもない秘訣 マルガレータ・マグヌソン著の紹介 フォン・オイラー 三根子(von Euler, Mineko) - WJWN(Washington Japanese Women's Network)

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特集 持たない生活

The Gentle Art of Swedish Death Cleaning 優しいスウェーデン式断捨離法 辛くも悲しくもない秘訣 マルガレータ・マグヌソン著の紹介:VIEWS 2018年冬号(第52号)掲載

フォン・オイラー 三根子(von Euler, Mineko)

マルガレータ・マグヌソン著The Gentle Art of Swedish Death Cleaning
マルガレータ・マグヌソン著The Gentle Art of Swedish Death Cleaning

今や世界中で反響を呼んでいる「こんまりメソッド」。2017年10月にはスウェーデンでも断捨離に関する一冊が発売された。書名はDöstädning –Ingen sorglig historiaで、発売は英語版のリリースとほぼ同時である。キーワードの「Döstädning」は、遺品整理を連想させて悲しく縁起の悪い「死」と、辛く面倒な作業の一つである「掃除」とを組み合わせた新語である。動詞形のdöstädaはトランプ政権で有名になった「代替的事実(alternative facts)」や、「#Metoo」と共に、スウェーデンのに挙げられている。

著者のマルガレータ・マグヌソンは、ストックホルムのベックマン・デザイン学校を卒業後、子供5人の子育てと長期海外生活、姑と夫の遺品整理を経験した後、すぐさま今度は自分のための「事前の後片付け」を決心したという。

マグヌソンのキーワードはDeath Cleaning

人生でただ一つ確実なのはいつの日かあの世へ引っ越すこと、しかし所持品なしである。良かれと思って遺したものでも遺族が有難がるとは限らない。処分に困って迷惑するかもしれない。そんな苦労をさせないために所持品は最小限にして余生をすごす。立つ鳥跡を濁さず、であろう。キーワードのDeath Cleaning/Döstädningは、一見不気味でイメージが悪い。忌み嫌われそうな言葉だが、マグヌソンは悲しいことではないと断言する。残り少ない余命が引き起こす切羽詰まったアクションとは大違い、自主的にマイペースで所持品の中から受取人が喜ぶ物を吟味して、さりげなく譲る生活が悲しいはずはないのだ。

Döstädaは不思議にもほのかなユーモアを醸し出す。必死で掃除を頑張ってフラフラになった様子を連想させる。日本語にも「必死で」とか「死に物狂いで」という表現があるように、スウェーデン語の「死」という言葉を冒頭につけた形容詞は「物凄く」の誇張につながって深刻さを失ってしまう。

Döstädningがgentleと訳されているのは「配慮」や「譲る心が根底にあるからだ。配慮は優しさにつながり、例えばリサイクルすべく人に物を譲ることは資源保護、環境に優しい行為となる。譲ることは人だけでなく自分を幸福にする優しい行為でもある。探し物の時間や無駄な労力から解放される幸せはもちろん、譲って喜ばせようという思いそのものが日々を幸せなものに変える。思い出を蘇らせるものを片づける時、懐かしい友達との再会を味わったり、譲ることで良い思い出をも分かち合うという幸せにつながる。

だが、断捨離は孤独な作業、結局は自分だけでやるしかないとマグヌソンは割り切る。遺品整理は代々、典型的な女の仕事であったろう。もしも夫と二人がかりで取り組んでも、男女の違いやアプローチの違いで作業はなかなか捗らなかったに違いない。また昔と今のニーズやライフスタイルの違い、物のなかった時代と物のありすぎる現状を考察する。思い出をレシピや詩を引用して語る。自分に優しくすることを忘れない事、時々ご褒美をあげて労わるようにと指摘する。優しく寛大なことが幸福度を高めてくれる。

スウェーデン式断捨離のノウハウ

マグヌソンはスウェーデン式断捨離を実行する時には、まずオープンに周囲に知らせてスタートするよう勧める。結果的には自分独りでするにしても、手助けも自ずから得られる。メモ帳を片手にあらゆる物入れを点検して全般を把握する。シュレッダーも入手する。

最初の取り組みは衣類やその他愛着のないものから。まず避けるべきなのは写真や手紙など、思い出深い物。置き場所を定め、捨てるもの、残す物、保管するものに仕分けする。収納の場に迷うもの、相続で諍いの種になるようなものは事前に処理。ネットで、オークション業者に連絡したり、あるいは慈善事業、博物館、図書館などに寄贈する。

キープする物には付箋紙に、子供、孫、友人、隣人、慈善事業、ごみ箱などの宛名をつけて保管する。また品物の由来、使用法等のメモ付きだと喜ばれる。訪問時に手土産代わりに持参する。捨てる物のうち、ごみ箱に直行するものを捨てるもの専用の箱に詰めてはっきり指示する。ごくプライベートなもの、個人的な思い出の手紙や写真など、他人が迷惑したり嫌な気がする写真や書簡は原則としてシュレッダーに。今まで秘密であったことは秘密のままにが原則である。

保管すべき書類の整理はテープのみを使い、シュレッダーで処理できないホッチキスは使わない。手元に残したい書籍は、地図帳・美術書・辞書・愛読書・読み返したい作品程度。残りはなるべく廃棄を避け、受け取ってもらえる先をリサーチする。全集、専門書、百科事典は行く先が限られるので、学校教育機関、研究者、収集家、趣味人,NGO、慈善事業、バザーなどを探す。聖書は教会にも貰ってもらえず、捨てにくい。一案は、ストックホルム・ブックフェア(8月中旬に歩行者天国で催される500mの超長い書籍蚤の市)に加わって売却することだ。その他、類似のイベントを地域でスタートする手もある。

手狭な住居に引っ越しする場合は、キープする家具のサイズを正確に測り、方眼紙にレイアウトして、入らないものはあっさり処分する。手狭なキッチンには、毎日使う台所道具と季節を選ぶものを考慮する。ディナー・セットも、新居のテーブル・サイズに合わせて削減。欲しがる人に譲ったり、オークション業者や慈善事業に連絡して処分する。高価なブランド物でも、愛着のない物は譲る。嗜好やニーズが変われば、数あるエキゾチックなクックブックも不要、グルメ・レシピ集からはお気に入りだけを残す。庭仕事や日曜大工の道具もマンション生活には不要だから、若いマイホーム世代に提供する。どうしても好きになれないプレゼントは善意を傷つけないよう送り主の目につき易い場所にしばらく置いたあと、その後は別の家庭に譲って喜んでもらう。その時も有難迷惑にならないよう配慮する。

しかし、中にはどうしても手放しがたいものもある。子供服、ベビー服。ペット、縫いぐるみやおもちゃ、手書きの手紙、写真など。時間がかかるが、写真などはスキャンしてUSBに移してプレゼントするとよい。

スウェーデン気質について

マグヌソンは現在、80歳代という。彼女はスウェーデンが貧しい農業国から脱皮し、生活大国と呼ばれるまでの変遷を遂げた時代を生きてきた。スウェーデン人は、今でも先祖の質素な持ち物を慈しむ。農地や河川や森林は、あくまで大地からの借り物、将来、次の代に渡るまで傷めないよう活用する大事な預かりもの。使い捨てを忌み、物を生かすことを好む。そんなスウェーデン気質が、マグヌソンの賢明な配慮に息づいている。断捨離においても「死贓品」が生かされwin-winの輪が広がる。

スウェーデン語版を手して、まずその軽さ、掌に置けばページをめくる時の快いバランスに好感を持った。レイアウトも文章もごく風通しが良いのも快い。どの章もページも爽やかで居心地が良い部屋のようである。本人によるさりげないイラストは、ところどころに息継ぎに置かれた休止符。エスプリのあるパターンと地味な色のカバーもシックな一冊である。

著者紹介

フォン・オイラー 三根子(von Euler, Mineko)

京都出身、同志社大学英文学部大学院修了、ストックホルム教育大学卒業、エリクソン社、パブリックヘルス庁等勤務、スウェーデン公認通訳、共著「プレイセラピー、子どもの病院&教育環境」。



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