アメリカで駆け抜けた5年間 角田 幸子(Tsunoda, Sachiko) - WJWN(Washington Japanese Women's Network)

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人・マイライフ

アメリカで駆け抜けた5年間:VIEWS 2018年春号(第53号)掲載

角田 幸子(Tsunoda, Sachiko)

渡米の日

アメリカで生活を始めてから今年の夏でちょうど5年目を迎える。

地元熊本の小学校で英語(外国青年招致事業のJET プログラム)を教えていた夫と出会い、結婚をきっかけにワシントンDCに移住することとなった。渡米当日、姉に買ってもらった青いスーツケース一個とリュックサックを持って、地元の熊本空港に着いた。見送りに来てくれた家族、親、友達に、ちょっと泣きべそをかきながら「行ってきます」と手を振り、これから始まる新たな生活への期待と不安を抱きながら機内の座席に座った。座席の窓から偶然見えた姪っ子、甥っ子が「さっちゃーん!ばいばーい!」と何度も大きく手を振りながらお見送りしてくれた姿が今でも思い出される。一緒に見送りに来ていたはずの父の姿が窓から見えなかった。後で姉に聞いたところ、「階段で一人うつむいて座っていたよ。」と教えてくれた。普段あまり感情を表情や態度に出さない父。この話を聞いたときは、大変辛い思いをさせてしまったと、心から悲しくなった。でも後戻りはできない。アメリカでも頑張ろう、と心に誓った。

カルチャーショック

バラ色で楽しいアメリカ生活も、2カ月が経つ頃にはカルチャーショックが待ち受けていた。文化の違いに悩み、悔しい思いもし、涙を流した日もあった。今では笑い話であるが、アパートの電気点検に来た作業員が、泥だらけの作業靴でずかずかとカーペットの部屋に上がって来た。「靴を脱いでほしい」と伝えた。すると「なんでだ」と言い返された。脱いでくれると思っていたので、言い返された時にはびっくりしてしまい、その後何も言い返せなかった。どうして靴を脱いでくれなかったのか。これがアメリカ式なのか。作業員の靴下に穴が開いていたからか。作業中ケガをするといけないので靴は履いたままなのか。いろいろと頭を巡らせた。今は、作業員が来る日には、事前にビニールシートを用意し、その上を歩いてもらうようにしている。そして、少々カーペットが汚れても気にならなくなった。5年の間に、たくさんのカルチャーショックを受けてきたが、最近は文化の違いとして受け止めるのではなく、この人はこのような考え方をするんだ、と個人の意見として理解し受け入れられるようになった。日本に住んでいた時は、人と違う事をすることに不安に感じたこともあったが、アメリカに来てからは、「人と違う」ということが大前提であり、「違ってもいいんだ」と楽しめるようになった。

アメリカで就職

アメリカで生活を始めた当初から、ジャンル問わずいろいろなボランティアに参加してきた。小学校内の掃除、野外イベントでのドリンク販売、一日限りのレストランでのウェイターのお手伝い、国立公園の掃除、シンポジウムの受付、家の壁や窓枠を制作するボランティアなどである。

アメリカで最初の就職先は、ワシントンDC日米協会であった。きっかけは、夫の友人から同協会がボランティアを募集しているという情報を聞き、興味があったのでオフィスを訪ね、日本語を教えるボランティアを半年間続けたことであった。米国政府から就労許可証が届いた頃に、私の前任の方の退職があった為、面接後そのまま就職が決まった。本当に運が良かった。日米協会は、日本文化の紹介、教育活動などを通して、日米間の相互理解、友好の絆を深めるため草の根的に活動をしている団体である。数名を対象とした小規模イベントから、毎年4万人以上の来場がある全米最大の日本のお祭り「さくらまつり‐ジャパニーズ・ストリート・フェスティバル‐」まで、様々なイベントを開催している。祭りを取りまとめているのは主要スタッフの4名。もちろん祭りの成功は毎年600名以上のボランティアのサポートがあってこそである。協会で働いた3年間、本当に多くのことを経験させて頂いた。特に、人と人が出会い、つながり、お互いの事を理解し、認め合うということ。この小さな出来事が友情のはじまりであり、大げさかもしれないが、平和な社会へと繋がる第一歩であるということを学んだ。また、アメリカで日本のことを伝え、知ってもらう事が、こんなにも楽しく、やりがいのある仕事なんだと気づくことが出来た。イベントの準備は大変な事も多々あったが、それ以上に日米間の友好の架け橋役として3年間やり遂げた達成感の方が大きい。異国で一生懸命頑張った自分を心から褒めてあげたい。

日米協会時代にお世話になった神尾りささんが代表を務める「桜咲く音頭プロジェクト」が、3月3日に「桜咲く音頭」という盆踊りの曲を発表した。歌詞がとってもいい。ワシントンDCで過ごした自分の姿をそっくりそのまま歌っているようで、とても気に入っている。この盆踊りは、世界中にいる日本や日本文化が好きな人たちと、日本人が、踊りを踊ってつながることを願って制作された。桜咲く音頭を踊って撮った写真や動画を、ハッシュタグ#sakurasakuondoを付けてSNSに投稿することで、世界中の人々が踊りを通して繋がることを目指すそうだ。すでにセルビアの大学の日本語クラスやフランス・パリのイベントでも踊られている。この曲は著作権フリー。曲や盆踊りレッスン動画もYoutubeに投稿されている。皆さんにも是非一度聞いて頂きたい。

「桜咲く音頭」ミュージックビデオ
♪「桜咲く街で 若かりし君と ともに肩を組み 駆け抜けた日々よ
悪戦苦闘 四苦八苦 うまくいかないことばかり
前を見られず うつむいていたとき
けして諦めないことが 明日への扉開くこと 君が教えてくれたんだ
ありがとう」

「花咲く音頭」ポスター
「花咲く音頭」ポスター

感謝

渡米したあの日、5年後の自分の姿なんて想像もできなかった。アメリカに来なければ経験できなかった事、知ることが出来なかった事、出会えなかった人々。すべての出来事を体いっぱいに吸収して大きく成長させてもらった5年間であった。故郷を離れて楽しく生活できているのは、一番の理解者である夫の支えがあるからだ。「言葉も文化も違う異国の地で不便な思いをしている。幸子が幸せに感じる事のためならば、どんな方法でも支え、応援するよ。」と私の幸せを第一に考えてくれる。また、両親も「何かあったら、いつでも帰っておいで!我慢することはない。」と両手を広げて待ってくれている。本当に心から感謝している。

8月に夫の仕事でフィリピン・マニラへ引っ越しが決まった。家族3人の新たな生活が始まる。不安もあるが、どんなことが待ち受けているのかワクワクした気持ちの方が今は大きい。きっとまたカルチャーショックもあるだろう。でも、こんな人生を楽しみながら、一期一会の出会い、出来事に感謝し、日々暮らしていきたいと思う。

娘の一歳の誕生日に撮った記念写真。今年夏に2歳になる。
娘の1歳の誕生日に撮った記念写真。今年夏に2歳になる。

著者紹介

角田 幸子(Tsunoda, Sachiko)

熊本大学大学院自然科学研究科博士前期課程修了。都市計画、建築学を学ぶ。2013年ワシントンDCへ移住。ワシントンDC日米協会で3年間勤務。同協会主催、全米最大の「さくらまつり」に奮闘した。アメリカで日本文化を伝える楽しさを学び、国際交流に興味を持つ。趣味は、もうすぐ2歳になる娘の成長観察。観葉植物の手入れ。和菓子づくり。



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