私の出会った芸術家、アンドレ・リュウ 前嶋 明美(Maeshima, Akemi) - WJWN(Washington Japanese Women's Network)

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特集 私が出会った芸術家

私の出会った芸術家、アンドレ・リュウ:VIEWS 2018年秋号(第55号)掲載

前嶋 明美(Maeshima, Akemi)

オランダのマーストリヒト屋外コンサート会場で(2017年7月)。中央にいるのが筆者と夫
オランダのマーストリヒト屋外コンサート会場で(2017年7月)。中央にいるのが筆者と夫

アンドレ・リュウとの出会い

15年前、私がアメリカに移り住んですぐのころだった。英語教室のクラスメートから「あなた、クラシックが好きならアンドレ・リュウを知ってるでしょう?」と聞かれ、「えっ、誰それ?」と、答えたら、「本当に知らないの?信じられない」と言われてしまった。家に戻って調べてみると、アンドレ・リュウは、オランダのヴァイオリ二ストであり、指揮者であり、ヨハン・シュトラウス・オーケストラの創設者でもある、世界的に有名な人物だったのだ。

YouTube には次から次へと世界中で演奏するリュウの映像があらわれた。その屋内外会場でのコンサートは、これまでのクラシック・コンサートの常識を破った全く新しいものだった。演奏のすばらしさはもちろん、規模の大きさ、豪華さ、美しさ、楽しさ。「な、なんじゃ、これは!」と、おもわず見入ってしまった。

これが私とアンドレ・リュウとの出会いだった。

アンドレ・リュウ (2018年版パンフレットの表紙から)
アンドレ・リュウ (2018年版パンフレットの表紙から)

ワシントン地域でのコンサート

今年の春のこと、「明美さん、アンドレ・リュウがワシントンに来るよ!」と、クラシック好きの友人が電話をくれた。その友人とは、その数日前ランチをしながらアンドレ・リュウの話で盛り上がったばかりだった。グッドタイミングとばかり、さっそくコンサートチケットを購入した。そして、9月20日、私たち夫婦はアンドレ・リュウのアメリカツアー初日のワシントン地域でのコンサートに向った。場所はバージニア州フェアファックスのイーグルバンク・アリーナ。

夜8時の開幕時間と同時に、いつものスタイル、アンドレを先頭に演奏メンバーの入場行進が始まった。観客は全員立ち上がって、大きな歓声と手拍子で迎える。今日の演奏メンバーは総勢50人、13か国の出身者とのこと。半数以上が女性、それも美人ぞろい。その衣装は専属衣装さんのお手製という、色とりどりの中世風ドレス。ゴージャスそのものだ。いよいよ「楽しいコンサート」の始まりだ。そして、いつものようにアンドレの巧みな司会トークと、バイオリンを弾きながら指揮をとるという独特のスタイルで進行されていく。ウィンナワルツが始まると客席から何組ものカップルが通路や舞台前に出て踊りだす。2時間のメイン演奏が終了してもアンコールは延々1時間も続き、ますます会場は盛り上がる。

バージニア公演会場での筆者
バージニア公演会場での筆者

途中、アンドレが観客に向って「どこから来ましたかー」と、呼びかけるシーンがある。私が着物で参加したのはこのためだった。すばやく立ち上がって、持参した大きな日の丸を掲げ「ジャパーン!」と叫んだ。すると、アンドレはこっちを見て指差し「オオ、ジャパーン!」と返してくれた。わぉ~、やったね。そして、最後のアンコール曲と共に天井から無数、色とりどりの風船が舞い降りる。あっという間の3時間だった。「よかった、楽しかった、さすがね」と、興奮冷めやらぬまま帰路についた。

念願のオランダへ

実は、私がアンドレ・リュウのコンサートを見るのはこれが2回目だ。1回目は昨年の7月、長年の夢だった「オランダへアンドレのコンサートを見に行く」を叶えた時。会場はアンドレの出身地マーストリヒト。ここは毎年必ず5日連続で公演され、特別人気が高い。チケットはすぐ完売になるので、私はその年の開催日が発表されると同時に購入した。しかし、苦労したのはホテル。マーストリヒトの町は小さいので、この時期、コンサートのお客でホテルは満員。やっと会場近くのホテルが取れたが、通常の3倍もの料金をとられてしまった。そのホテルの朝食時、隣のテーブルに居合わせたイギリス人の老夫婦が「私たちは毎年ここに来る。もう20回目だ。今回は3日連続で見るんだ。」と言ったのには驚いた。

そして、7月9日のコンサート当日。会場は恒例の屋外広場、定評通りの豪華さだ。会場周囲にはたくさんのレストランがあり、朝から真っ白なクロスをかけられたテーブルが客席を囲むように、所狭しと並べられる。夕方からはコンサート客の特別席となり、飲食をしながら演奏終了まで楽しむことができる。騎兵隊マーチングバンドが会場を行進し、開演の雰囲気が盛り上がった。私たちも入場着席すると、隣席の人たちが「どちらから?」と、すぐ会話が始まる。専属カメラマンのスナップ写真サービスもあり、私たちも写してもらった。

いよいよ開演、アンドレを先頭にオーケストラメンバーの入場。そして前述した楽しいコンサートのスタートだ。途中、会場外側からの大砲音とともに紙吹雪が頭上を舞い散ったり、演奏クライマックスには花火が夜空を真っ赤に染め、観客は大歓声を上げる。屋外会場ならではの大演出だ。バージニアのコンサートも良かったが、ここのコンサートは一味も二味も違う。観客の半数以上は外国から訪れた人々で、リピーターも多い。アンドレのコンサートを知り尽くした人たちだ。この日のために、これを楽しむために、日々一生懸命働き、お金を貯めてやってくる。私もそのひとり?何よりも、アンドレと一緒に歌って踊って、みんなで楽しむコンサートに大満足だった。あのホテル代のことも忘れて。

常識を変えた新しいコンサート

昔、クラシック音楽は王侯貴族のものだった。そのおごりが、クシャミをするのも憚られるようなクラシックコンサートの常識になってしまったのかもしれない。しかし、アンドレ・リュウは「音楽は演奏するほうも、観る・聴くほうも、楽しむこと」をモットーに、世界中を回って、日々、一般人のファンを増やしている。演奏曲目はクラシックに限らず、その国の民謡や流行歌など、時宜に応じた曲を演奏し、メンバーも観客も一緒に歌い、踊り、コントまで飛び出す。そして花火などの演出サービスで観客は大満足。「あれはクラシックじゃない」と言う人もいる。しかし、私は誰が何と言おうと、芸術家、アンドレ・リュウの豪華で楽しいクラシックコンサートが大好きだ。

音楽と花火のパフォーマンス(リュウのフェイスブックページより)
音楽と花火のパフォーマンス(リュウのフェイスブックページより)

アンドレ・リュウ & ヨハンシュトラウス オーケストラは、創立31年になるそうだ。そしてアンドレ・リュウは来年70才を迎えるとのこと。同世代を生きる私にとって彼に熱い親近感を覚えるのは、ごく自然のことであり、今後も元気で活躍することを願ってやまない。


著者紹介

前嶋 明美(Maeshima, Akemi)

1948年、山梨県生まれ。保健師、養護教諭として地域、学校で30年間勤務。2003年、早期リタイアして再婚のため渡米。山梨日日新聞社海外リポーター。ウェストバージニア州 Bunker Hill 在住。



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